芸能

AKBメンバーが韓国デビューに挑戦 PRODUCE48の魅力

■露呈する日韓アイドルの違い

 元々、年一回の総選挙システムで「人気の可視化」が行われるAKB48グループは、こうしたサバイバルには一日の長があります。メンバーもその日常を晒すバラエティ番組を幾つも経験して、精神的にタフな状況を乗り越えてきた”猛者”です。しかし、アイドルに求められる要素が全く異なる韓国では、苦戦を強いられてしまいます。

 最初の試練は、参加者の基本的な実力を計測する「事務所別」のミッション。ここでの評価によって、A~Fまでのクラス分けが行われます。審査を行うのはコーチングも担当する、K-POPシーンのベテラン歌手とダンスコーチ陣です。

 この第一関門で高評価を得たのは、やはり練度の高い韓国側のメンバーでした。グループの活動停止などで居場所を失ったプロとして実績のあるメンバー、もしくはそれと同等の実力を備えた“スーパー練習生”たちのハイレベルなパフォーマンスを目の当たりにして、AKBグループメンバーに動揺が走ります。

「ヤバい、自分がF(クラス)に行く未来しか見えない」
「ボイストレーニングなんか一回もしたこと無いし。研究生は基礎トレーニングするわけないじゃん」
「先輩の(ダンス)を見よう見まねでやってた」

 番組では、AKBメンバーがうっかり漏らしてしまった小声の本音会話もしっかり放送されてしまいます。どんな小さなつぶやきも逃さず、出演者の心理を浮き彫りにしていくのが、このPRODECEシリーズの恐ろしいところでもあります。

 日本人チームの先頭を切って、中野郁海と小田えりながアルバム収録曲の『Get you!』を披露します。中野はテレビのダンスバトル番組で優勝、小田もAKB内の歌唱コンテスト企画で優勝の過去があり、それぞれに実力者であるとの評判が審査員にも伝わっていたようです。が、「ガッカリした」「歌うスタイルが古い」「ダンスバトル一位の実力だとは正直に思えない」と、さんざんな酷評で迎えられてしまいます。

 最終的に「このままではステージに上げられない」と一刀両断にしたのは、ダンスコーチ陣筆頭格ペ・ユンジョン女史。KARAの大ヒット曲『ミスター』ほかK-POP史上に残るレジェンド曲の振り付けをしてきた人だけに、言葉の重みが違います。このあとも日本人メンバーたちを次々D~Fグループに突き落とし、「日本の子たちはかなり泣きそう」と今後の展開に暗雲を漂わせる恐怖のキラーフレーズを吐きます。

 冒頭に引用した強烈なセリフも、この猛女ユンジョンさんのものです。強烈な詰問の炎を浴びたのは『止まらない観覧車』を披露したHKT48からの7名。長い沈黙の後ようやく「(日本での)審査は歌とダンスでした」と答えた松岡菜摘の声は震え、目も潤んでいます。しかしユンジョン女史の口撃は止みません。「練習はたくさんしますか? 全然息があっていない。何を練習したの?」

 確かにカメラはダンスのばらつきやキメポーズの不安定さをしっかりと捉えていました。ユンジョンさんのキツイ言葉は、単に踊りの巧拙のことを話しているのではありません。K-POPにとって非常に重要なポイントを踏まえた指摘をしようとしているのでした。

 K-POPグループのダンスは「カル群舞(刀群舞)」と呼ばれる、一糸乱れぬチームの同期ぶりに最大の特徴があります。複雑なフォーメーションを様々に絡めながら、タイム感ばっちりに揃えるダンスは他の追随を許しません。キツイ戒めの言葉は、韓国のステージに立つ以上どうしても踏まえなければならないキーポイントを伝授する、愛のムチだったのです。

 彼女が単に意地悪な憎まれ役でないことは、これまでのPRODUCEシリーズでも証明済みです。厳しい指摘を受けて、その欠点を克服してきた生徒には惜しみない賛辞を送り、大きな成長を見せた元劣等生を満面の笑みで包むシーンを何度もカメラは映し出しています。このギャップがなんとも魅力的で、思わず「ねえさん頼んだ!」と叫びたくなることも。

 一見残酷ショーのようにも見えるPRODUCEシリーズですが、鬼コーチの叱咤の裏にある強い愛はもちろん、切磋琢磨するライバル同士が友情を築いていく過程や、当初は目立たなかった才能が徐々に開花する姿など、隠れたエモーショナルなドラマが掘り出されます。ジェットコースターのような展開の魅力にとりつかれたら最後、次回放送を指折り数えて待つようになるのです。

 第一回では実力不足が目立ったAKBグループの中から、何人もの注目株も発掘されてきました。歌と編曲の実力を兼ね備えながら、2009年のAKB加入以来ずっと総選挙では圏外(101位以下)だった竹内美宥は、回が進むに従ってじわじわと評価を上げ、第一次順位発表式ではデビュー圏内の11位という高評価を得ました。

 また矢吹奈子はどん底のF組からのスタートでありながら、ポジションバトルで超難関曲GFRIEND「LOVE WHISPER」の高音パートを完璧にクリア、個人得票1位に躍進。第一次順位発表式では7位、第二次では2位に躍進しています。

 他にもポジションバトルのダンス部門で突如1位に浮上。10万点を奪取してそれまでの低迷を払拭した村瀬紗英や、チーム内1位を獲得して村瀬に続いた白間美瑠など、日替わりでシンデレラガールが次々登場しています。

 様々なドラマを生んだPRODUCE第三シーズンも、いよいよあと三回を残すのみ。8月31日の放送が最終回となります。30人までに絞り込まれた候補たちは、番組オリジナル課題曲での「コンセプトバトル」に挑戦。この最終ミッションを経て、最終12名のデビューメンバーが決します。

 はたして日韓のアイドル文化の壁を破って、どんなグループが誕生するのか。もうワクワクジェットコースターが止まりません。まさしくPRODUCEの敏腕Pさんの思う壺。発着所まで無事に戻って来られるのか。猛暑に負けない体力をつけながら最終回を待ちたいと思います。

関連記事

トピックス

記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国分太一コンプラ違反で解散のTOKIO》山田美保子さんが31年間の活動を振り返る「語り尽くせぬ思い出と感謝がありました」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン