◆「選手を集めるだけ」の監督
全国から有望な中学生を集めた強豪私学の隆盛も、近年の高校野球界の変化だ。その潮流にも、豊田は警鐘を鳴らす。
「残念ながら、いまの高校野球は『野球が上手ならそれでいい』という雰囲気が強くなっているようにも感じます。指導者、学校、選手、親御さんにもです。
そりゃ、いい選手を集めれば監督は左団扇ですよ。僕も昔は有望な中学生がいると聞けば、出掛けていった。桑田(真澄)君の家にも日参しましたが、門前払いでしたね。
いまは昔と違い、監督の熱意だけで来てくれるケースは少ない。昔は“面白そうだから行こう”とか、“監督が恐そうだからやめよう”と、単純な考え方で高校を決める子が多かったが、最近はレギュラーになれるか、OBの進学先など、親子でよ~く調べている。学校側が“アメ”を用意しないと入部してくれません。でも、やっぱり『集める』だけではなく、『育てる』ことを忘れてはいけない。
いま圧倒的な強さを誇っている大阪桐蔭は、西谷(浩一)監督が熱心に選手集めをしています。でも、彼が偉いのは、早朝練習でも直接指導をしていること。最近は“選手にやらせるだけ”の監督が増えましたが、彼は違うようです。だからあれだけ強いチームを作れるんでしょうね。