不思議な縁で出会った美しいタイ人女性カンダヤを語る
「若いときに好きだった女優の安田道代に瓜二つだったという以上に、媚を売らない感じが魅力的だったですね。エレベーターの中で話しかけるとだいたいみんなニコッとするんだけど、彼女はまったく笑わなかった。
ぼくは海外によく行くんですが、テレビのキャスターがみんな怖い顔しているんですよ。日本ではへらへら笑っている、なんでだろう、って思ってたので余計に印象に残った。これからは日本にもこういう女性が増えてくるんじゃないか、カンヤダはその先駆けかな、なんて勝手に思ったりもして刺激されました」
カンヤダは自分の感情に正直で、思ったことはすぐ口にする。大洪水で被害を受けた実家を何とかしたいと、仕事のスキルアップのため日本語を学びに来ていた彼女がタイに戻り、子供を産んでシングルマザーになってからも、LINEのやりとりが続いた。
本にも書かれている通り、鈴木さんは、未婚の男女を見つけると放っておけなくなる「お節介」な性分だという。友人たちを誘ってカンヤダの故郷パクトンチャイを訪問したとき通訳をつとめた青年が、カンヤダに心ひかれるのを見て「お節介」は発動される。彼女がこれからどう生きればいいか、相談に乗り、生活の筋道をつけるという「へんな仕事」を彼に依頼するのだ。
父が日本人、母がタイ人というこの青年も、鈴木さんの「カンヤダをなんとかしようプロジェクト」の一員に引き込まれ、さんざん振り回される。農村地帯に育ち、家族思いで結婚に失敗しているカンヤダと、バンコク育ちで、合理的にものを考える青年。育った環境も、ライフスタイルもまったく違う2人の恋のゆくえも、この物語の1つの柱となっている。
「『女性セブン』連載中、読者から『カンヤダはひどい女だ』『男性がかわいそう』って感想も届いたそうです。まあ、そうかもしれないなと思いますけど、彼は彼で、自分とはまったく違う彼女の生き方に感動したりもしてるんです」
せっかく鈴木さんが資金を調達したスパ経営もうまくいかず、通訳青年の尽力で開店したパクトンチャイのレストランも3か月でクローズするはめに。〈今、ここ〉だけが大切で、損得勘定がまったくできず、自分のことをさておいても困っている誰かのために何かしようと動くカンヤダに、周りはあきれたり、驚かされたり。そんな彼女を見ることで、忘れていた大切な何かを思い出したりもする。