わさび自身が「喬太郎師匠に『純情日記横浜編』を教わっていた時期に作ったので、どこか似たところがある」と言うとおり、『出待ち』は喬太郎作品に通じるものがあるが、山田よりも顧問の存在感が圧倒的に大きい演出は喬太郎によるもの。これが見事にハマっていた。
わさびのトリネタは「百万円の札束/肝試し/パーリーピーポー」というお題で作った『MCタッパ』。老朽化した自宅を肝試しスポットとして若者が押しかけるのに迷惑している老夫婦が、「パーリーピーポーが住んでる」とアピールしようと、クラブDJに弟子入りする噺。DJのラッパー口調がわさびのキャラに合わな過ぎて無性に可笑しい。頑張ってパーリーピーポーとして振る舞ったせいでゾンビ扱いされるという展開もバカバカしくていい。
せっかく作った三題噺をブラッシュアップするためにも、この会は続けてほしい。次のゲストが誰になるのか、楽しみだ。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年9月7日号