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2018.09.07 07:00  週刊ポスト

津川雅彦さん、溝口健二監督に5歳で出会ったときの思い出

 子役といえども演出に容赦はなかった溝口監督。だが、津川にとってそれは大きな発見のある現場でもあった。

「薪を担いで泥みたいな所を歩く場面があるんだけどさ。助監督が気を使って薪を軽くしてくれたんだ。それで重く見せようと芝居して歩いていたら、溝口監督に『薪が重くない、もっと重いのを載せなさい』と言われてね。

 少しずつ重くしていったんだけど、何度やっても『まだ軽い』と言われてしまってね。しまいに『マー坊、大丈夫か』って助監督さんが心配するくらいの重さになったんだ。前のめりにしないと、後へ引っ張られるわけさ。それで最後の一個を載せたら、もう、土に足がめり込みそうになって、前へ歩こうにも足をあげたらこけそうになって。そのまま泥沼の中を歩くわけだから、ほんとにヨロヨロしていたら、ようやく『オッケー』ってなったんだよ。

 試写を見てみると、確かにほんとに重そうに歩いているわけだ。やっぱり、子どもにうまい芝居をさせようと思ったら、リアリティでやるしかしょうがないということさ。試写を見たときに、監督の言ってることは確かに意地悪だけじゃないっていうことがわかったんだよ」

 子役時代からの蓄積が、名優を形造る礎の一つとなっていた。

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

■撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2018年9月14日号

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