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高野山参拝口の橋本市はパイル織産地 フェイクファーも本場

やわらかな手触りで“幻の織物”とも呼ばれる再織のマフラー

 和歌山県の東端に位置し、紀ノ川の中ほどにある橋本市高野口町。ここは140年以上続くパイルの織や編物の生産地として有名な場所。世界遺産である高野山の参拝口として、平安時代から親しまれてきた高野口町。この町を中心に、発展してきたのがパイル織産業だ。

 パイル織とは、もこもこと毛羽立った織物のこと。私たちの生活にも多く登場しているが、主に、新幹線や特急電車、長距離バスのシートなどに使われている。そもそも高野口で、パイル織が作られるようになったのは1817年のことだ。

「この地には、紀ノ川が流れており、昔からきれいな水に恵まれていたことから、江戸時代に木綿織物が盛んに作られるようになりました。明治に入ると海外からの織物が日本に入ってくるようになり、そのうちの1つ、ヨーロッパのシェニール織を目にした高野口出身の前田安助が、自分たちでもこの織り方が再現できないかと、考案したのが“再織”でした」(紀州繊維工業協同組合参事・西正幸さん・以下同)

 再織とは、1度織り上げた生地を縦糸に沿って裁断して毛羽立たせ、モール糸にしたものを横糸に沿って織り上げる手法のこと。これで柄が現れる。再び織り直すことから、再織と呼ばれている。

「再織の成功からパイル織の一大産地として発展しました。再織はかつては手織りで作っていましたが、機械化が進み、現在は機械を使ったパイル織が主流。生地だけでなく、パイル織の技術を使い、フェイクファーなども作っています」

 その技術は本場、ヨーロッパをしのぐものがあり、今や世界のトップのアパレルブランドも注目。フェイクファーなどはヨーロッパのトップブランドでも採用されている。

「機械で量産できるようになったとはいえ、やはり、パイル織は手間がかかる作業です。それだけに和歌山のパイル織は、質感のよさと見た目の高級感が人気です。それに、再織が作られているのはここだけなので、その希少性も知ってもらえたら嬉しいですね」

 しっかりとしたやわらかい素材感で、最近はバッグとしても人気が高く、リピーターも多い。

※女性セブン2018年9月20日号

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