そこで、目指す方向はATMの多機能化、マルチ化だ。コンビニ銀行で先駆けたセブン銀行では、オリンピック・パラリンピックイヤーの2020年、4世代目となる新型のATMを、首都圏から順次、入れ替えていく予定。
その段階で、新型ATMにはどんな機能が搭載されるかはまだわからないが、以前、同行の二子石謙輔社長(現会長)に取材した際は、
「たとえば公共料金収納。いまはレジに振替用紙を出して、ポンポンポンと3か所ぐらいスタンプを押していますが、これをATMで完結できるようにしたい」
と語っていた。また、流通業界関係者の中には「それ以外にも、選挙で投票所に行かずともATMで投票が完結できるようにしたい構想などもあるようだ」と指摘する向きも。
ほかにも、セブン銀行ではフリーマーケット等、企業から個人への送金ニーズが高くなっていることを鑑み、ATMによる現金受け取りサービスも今年5月から始めている。送金の際に都度、かついろいろなところに自分の口座情報を出すことなく、企業からメールで送られる確認番号の入力だけでATMから現金が受け取れる仕組みだ。
ネックは、現金受け取りが紙幣はATMから、硬貨はレジで受け取るという二度手間(ATMが硬貨には対応していないため)になる点と、サービスの対象がセブン&アイグループの企業が主力で、まだ広範囲な企業数とはいえないことだ(徐々に外部企業にも拡大して100社を当面の目標にしている)。
さらに、これまでセブン&アイグループの電子マネー「nanaco」をセブン銀行のATMでチャージできていたが、9月13日、このチャージ機能を「スイカ」や「パスモ」「イコカ」といった交通系電子マネーや「楽天エディ」もチャージできるようにすると発表。そのサービス開始を、ローソン銀行の営業開始と同じ10月15日にぶつけてきた。
迎え撃つセブン陣営も対抗心むき出しといった印象だが、イオンの「WAON」、ファミマの「ファミマTカード」、ローソンの「おさいふポンタ」といった直接のライバルの電子マネー以外はいち早く抑えてチャージできるようにし、セブン銀行のATMのアドバンテージを全面に出していくようだ。
また、来春にもスタートするスマホアプリについても、セブン銀行も出資する「セブン・ペイ」という別会社をすでに設立しており、キャッシュレス対応の準備も抜かりなく行っている。
ともあれ、将来はATMの現金引き出しはATM機能のワン・オブ・ゼムとなり、ATMという呼称もなくなっていくかもしれない。
ただ、多機能情報端末といえばローソンなら「ロッピー」、ファミマなら「ファミポート」、セブン‐イレブンにも「マルチコピー機」がすでにある。映画、スポーツ、レジャーなどのチケット関連、あるいは住民票や印鑑証明の発行などが日常風景となっているが、ATMを多機能化していく過程で、こうした従来の情報端末とはあくまで棲み分けるのか、あるいは統合して、ATM機能や決済機能付きの総合マルチ情報端末にしていくのか、コンビニ大手各社は将来、そうした点の判断も迫られそうだ。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)