高校2年のAさんは、LINEでメッセージがきたらすぐに返事をしないと落ち着かない。「既読」がついたのに返事がないと嫌われてしまうかもしれないからだ。クラスのLINEグループでも、「Aさんはどんな時間でも必ず返事をくれて、しかも早い」と評判だ。そのために、Aさんはあらゆることの中でLINEを最優先しており、食事中もトイレやお風呂の間もスマホを手放さない。テスト前日でも勉強よりLINEを優先させた。毎晩スマホを握ったまま寝落ちするのが日課となっており、おかげで部活もやめてしまい、成績もガタ落ちとなってしまったという。
男子中高生の場合は、スマホゲームやソーシャルゲームを含めたオンラインゲームにはまり、時間を問わずにプレイし続けることが増えてくる。
基本的に無料で参加できるという敷居の低さもあって、中高生のプレイヤーも多いバトルロワイヤルゲーム『荒野行動』を始めた男子校に通うB君。最初は1日に1回と回数を決めていたが、ある休日、朝から晩まで寝る間も惜しんでプレイして生き残ることができた。それが嬉しくて次第にプレイ時間が長くなり、生き残ることも増えたが、気づけば朝になってしまうことも増えた。学校へは何とか行っているものの、いつでも頭の中は荒野行動でいっぱい。授業中に寝てしまうことも増え、いつも疲れているという。
ゲームへの依存が疑われる場合、トイレや食事、睡眠の時間も惜しんでゲームをするようになったらかなり症状が悪化していると言えるだろう。こちらも遅刻や欠席、体調不良や学業不振などにつながり、悪化した場合は学校を中退するケースも出てくる。
上記のような依存は世界中で問題となっており、近ごろ人気の口パク動画アプリのTikTokは、この夏のアップデートで2時間以上見続けると注意を促す機能が追加された。InstagramやFacebookでも、使用時間を管理する機能が追加される見込みだ。とはいえ、これらの機能はあくまでも時間を区切る行動を、促すことしかできない。
もし子どもがネット依存になってしまった場合は、治療には認知療法がとられる。ネットを利用するようになる前と後で、得たものと失ったものを比較させるのだ。「レギュラーを狙ってがんばっていた部活をやめてしまった」「高校を退学してしまった」など、自分の行動を客観的に見て「まずい」と思わせられたら治療の第一歩。徐々にネットを使う時間を減らしていければ、症状は快方に向かうだろう。
ネット依存症になる学生は、うまくいかない学校生活や成績不振などにより、逃避行動でネットにはまるケースが少なくないようだ。保護者は子どもの兆候に早めに気づき、悪化する前に子どもに声かけをしたり、利用時間に関するルールを守らせたり、強制的に外に連れ出したりすることも必要だ。一番身近にいる保護者が、子どもの適切な利用を見守ることが一番大切なことなのだ。