国内

「安倍政権こそがリベラル」朝日新聞にとっての不都合な真実

朝日新聞にとって不都合な真実とは?

【著者に訊け】橘玲さん/『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』/朝日新書/875円

【本の内容】
 報道や世論調査、心理学の実験結果などを参照し、なぜ世界中で「リベラル」的価値観が共有されながら、西欧でも日本でも「右傾化」が進むのか、「アイデンティティー」をキーワードにわかりやすく解き明かしていく。著者自身は「朝日ぎらい」でも「好き」でもないとのことだが、「リベラルな新聞社には『正規/非正規』などという身分差別はなく、とうのむかしに同一労働同一賃金を実現しているはずだ」といった持論(イヤミ?)が「あとがき」で展開されている。

 刺激的なタイトルだが朝日批判でも、朝日擁護でもない。橘さんはこう語る。

「なんでこんなに朝日新聞が嫌われるのか、ずっと興味があったんです。リベラルと言いながら、実はリベラルじゃないのが1つ。もう1つの理由は、日本人であることを唯一のアイデンティティーと考えるいわゆる『ネトウヨ』の人たちから、彼らの善悪二元論で『反日』の代表として叩かれている。そんなことを考えながら、だけどよくある朝日批判の本や雑誌と書店で並べられたくはないなと思っていたら、朝日新聞出版から依頼があって。『この本は朝日から出せばいいんじゃないか』と」

 企画もすんなり通り、朝日新聞社内の書店では長らくランキングの1位を占めていたそうだ。

 朝日新聞を嫌い、安倍政権を支持する状況を指して、若年層の「右傾化」といわれる。だが、橘さんは「それは違う」と言う。

「若い人にとって、『変えるな』しか言わない共産党は『保守』で、改革を掲げる自民や維新が『リベラル』なんです。世論調査の結果にも出ていますが、この『保守』と『リベラル』の逆転は40代と50代の間で起きていて、別に今の若者が右傾化したわけじゃない。朝日新聞のようなリベラルにとっていちばんの『不都合な真実』で、メディアのダブルスタンダードは読者に見透かされています」

 グローバリズムの中で、世界全体はリベラル化、知識社会化する流れにもあり、そこから脱落する人は増える一方だ。「中流の崩壊」は、アメリカでトランプ大統領が誕生したことでもわかるように、「保守化=右傾化」を招く。

 本では、知能や遺伝と政治的態度との相関にも踏み込む。

「言語的な知能って自分を説明できる能力なんです。子供の頃から自分のしたことを説明できないと、世界が不安や脅威を与えるものに思えて保守的な気質になる。一方で、言語的能力は高くなくても仕事ができる人はいます。でも知識社会ではすべてを論理化しマニュアル化するから、彼らの仕事は人件費の安い国へ流れ、さらにはAIロボットに居場所を奪われつつある。世界中で今起こっているのはこういうことなんです」

◆取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2018年10月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
「鳥型サブレー大図鑑」というWebサイトで発信を続ける高橋和也さん
【集めた数は3468種類】全国から「鳥型のサブレー」だけを集める男性が明かした収集のきっかけとなった“一枚”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン