ビジネス

銚子電鉄が発売した「まずい棒」からおっさんは何を学ぶべきか

考案者で怪談収集家の寺井広樹さん

 人生100年時代、厳しい状況をどう乗り切るかがさらに問われる。大人力について日々考察を続けるコラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 人間、生きていれば「まずい状況」に追い込まれたり「まずい気持ち」を抱いたりします。いわんや、おっさんをや。「まずいなあ」と頭を抱えていても仕方ありません。いろんな「まずい」を蹴散らして、しぶとくたくましく生きていきたいところ。

 悩み苦しむおっさんにとって、貴重なヒントを与えてくれる商品があります。その名も「まずい棒」。かつて「ぬれ煎餅」で話題を集めた銚子電鉄が、8月3日に販売を開始しました。ひところは収入の7割を担っていた「ぬれ煎餅」ですが、売り上げが減少し、ぬれ煎餅だけでは鉄道事業の維持費が賄えなくなり、経営状況はかなりまずい状況になっています。社内には「電車なのに自転車操業」という声も。起死回生の願いを込めて売りだしたのが、この「まずい棒」です。

 はたして、こんなまずそうな名前のお菓子が売れるんでしょうか。ところが、各駅での販売に加えて、9月7日から公式オンラインショップでのネット販売がスタートしたこともあり、2ヵ月弱の販売数はなんと18万本。値段は15本セットで600円(税込)、バラで1本50円(税込)なので、少なめに見積もって720万円の売り上げです。継続して売れ続けたら、まずい経営状況を脱出できるかもしれません。

 食べてみましたが、コーンポタージュ味のサクサク食感で、おお、そこそこおいしいではありませんか。小腹がすいたときにはちょうどいい感じです。よく似た形状の定番スナック菓子もありますけど、もしかしたら、あれの新バージョンでしょうか。

「いや、あのお菓子とは、断じていっさい関係ありません。そこを強調しないと、かなりまずいことになります。あくまであのお菓子のリスペクトを前提としたオリジナル商品です」と慌てるのは、考案者で怪談収集家の寺井広樹さん。寺井さんは同電鉄が毎年夏に走らせている「お化け屋敷電車」の企画を2年前から手伝っている縁で、まずい経営状況を打開する策はないかと竹本勝紀社長に相談されていました。

「構想は2年ぐらい前からあったんですが、私も社長も『まずい棒だから、まずい味にしなければいけない』という思い込みにとらわれて、何味がいいかわからず、開発がストップしていたんです。でも、考えてみたら、まずいものをお客さんに買ってもらえるわけがない。おいしくていいんじゃないかと発想を変えて、一気に形になりました」

 パッケージのイラストは、ホラー漫画のレジェンドにして鉄道マニアでもある日野日出志先生。目の大きなキャラクターは「まずえもん(魔図衛門)」という名前で、世の人々の「まずい……」という言葉に反応して魔界からやってくるそうです。鉄道マニアとして知られる中川家の礼二さんに似ている気がしますが、それも狙ったんでしょうか。

「いや、まったくの偶然です。ただ、いろんな人に指摘されて、だんだんそう見えてきました。となると、電車のほうは兄の剛さんに似ているような気も……。いつの日か、おふたりで銚子電鉄に乗ってもらえたら嬉しいですね。イベントにお呼びする予算はないので、あくまで何かのついでに自主的に来ていただけたらと」

 控え目なのか図々しいのか微妙ですが、実現することをお祈りしております。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン