ライフ

事故で息子を亡くした女性に届いた13年後のメッセージ

亡き息子から届いた13年後のメッセージ(イラスト/ico)

 事故などで若くして我が子を亡くし、自責の念にかられる人は少なくない。しかし、亡くした子供からの思いがけないメッセージによって、心に変化があったというケースも。48才会社員の女性が、貴重な体験談を明かす。

 * * *
 私が息子から目を離したのは、ほんの一瞬、1秒にも満たない時間でした。でも、私と息子を永遠に引き裂くには、充分な時間だったのです──。

 事件が起きたのは、3月。7才のひとり息子と買い物に行った帰りのことでした。息子は、農業用水路の脇の1段高い石段の上を歩くのが好きで、この日も「危ないわよ」と言う私の注意を無視して、ヨロヨロと歩いていました。

 自宅へ向かう曲がり角を過ぎても、石段を下りず、家とは別の方向に直進しようとする息子に、私は少し声を荒らげ、「いい加減にしなさい! お母さん、先に帰るわよ」と怒鳴りました。

 ところが、「いいよ~」と、こちらも見ずに答える息子。私はイライラし、「勝手にしなさい」と、息子から一瞬目を離しました。本当に一瞬。しかし再び、息子のいる方向を見た時、その姿はもうありませんでした。

 嫌な予感がつのり、農業用水路のなかをのぞき込みました。水路は雪解けの水で水位が上がっており、流れは急。

(まさか、ここに落ちた?)

 濁流渦巻く用水路。落ちたらひとたまりもないことは一目瞭然です。

 それからの記憶はあいまいです。息子の名前を叫びつつ、用水路のそばを右往左往する私を近所の人が見つけ、警察と救急に連絡したそうです。そして翌日、自宅から3km離れた用水路で見つけられた息子は、すでに変わり果てた姿でした。

「なんで、目を離したんだ」

 夫には何度も責められました。でも私自身、何度も自問自答したその問いに、答えられるはずがありません。自殺未遂を繰り返す私に夫は嫌気がさしたのでしょう。離婚届を突きつけられました。

 その後私は都内の“川のない街”でひとり暮らしを始めました。菓子工場とファミレスで昼も夜もなく働き続け、気づけば事件から13年が経っていました。そんな時、元夫から突然連絡が。

 訝しく思いながら会いに行くと、元夫は何も言わず、封筒を差し出しました。それは、小学校の記念行事の時に息子が書いた、20才になった自分へのメッセージでした。そこに書かれていたのは、息子の最後のメッセージ。

「おかあさんだいすき!
ずっとおかあさんといる」

 そう、青いクレヨンで書かれていました。

 最後の瞬間、息子に怒りの言葉を投げかけたことを、思い出さない日はありません。きっと、お母さんなんて大嫌いだと思いながら、最後の瞬間を迎えたはずです。それなのに…。

 私は元夫に頼み込んで、このメッセージをもらい受け、今も肌身離さず持っています。

「私も大好き。きちんと見守ってあげられないでごめんね」

 天国にいる息子に、毎日そう、話しかけています。

※女性セブン2018年10月18日号

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン