ビジネス

大衆居酒屋の先駆け 「養老乃瀧」がしぶとく生き残れる理由

今年で開業62年を迎えた「養老乃瀧」

 酒のツマミに“和・洋・中”と何でも揃っている「総合居酒屋」の凋落が叫ばれて久しい。リーマン・ショックや東日本大震災を経て、サラリーマンの外飲み機会が極端に減ったことや、食事と一緒に軽く飲む「チョイ飲み」ブームが続いていること、そして若者のアルコール離れなど、さまざまな要因が重なった結果といえる。

 日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」(2017年)でも、居酒屋業態は店舗数・客数・客単価ともに前年を下回り、売上高はなんと9年も連続して前年割れしている。

 だが、1970年代に日本の大衆酒場文化を築いた老舗の居酒屋チェーンは、全盛期に比べて店舗数は減っているものの、しぶとく強く生き残っている。その代表が「つぼ八」「村さ来」「養老乃瀧」の“旧御三家”といわれる居酒屋だ。昭和のサラリーマンにとってはお馴染みのブランドだろう。

 近著に『居酒屋チェーン戦国史』(イースト新書)がある外食ジャーナリストの中村芳平氏は、「総合居酒屋チェーンは、まだ終わったわけではありません」と話す。

「大衆チェーンの難点は、飽きられること。高級料亭のように100年も続くなんてことはなく、単一ブランドでは30年が限界だという説もあります。でも、料理、人材、サービスの質を上げながら、地道にブランドをブラッシュアップさせて30年以上生き残ってきたのが旧御三家の居酒屋チェーンです。

 もちろん、その間には新しい業態も次々と開発しています。例えば、つぼ八グループの『ホルモンの美味しい焼肉 伊藤課長』や、養老乃瀧の『一軒め酒場』など。村さ来の運営会社も郊外型のダイニングレストラン『とりあえず吾平』など数多くの居酒屋チェーンを展開していますが、どこも創業の看板は降ろしていません」(中村氏)

 事実、ともに1973年創業の「つぼ八」と「村さ来」は、現在もそれぞれ100店以上の店舗があり、つぼ八は創業の地である北海道に多く、総店舗数は190を超えている。

 そして、横浜市曙町(神奈川)に1号店を開店したのが1956年と最古参の養老乃瀧は、郊外や私鉄沿線を中心に全国で360店舗を展開している。全盛期には1500店舗を超えていたというから、店舗数こそ大きく減らしてはいるが、まさに大衆酒場文化を築き、その価値を最大化させた立役者といえる。

 養老乃瀧が創業から60年を超えてもなお、支持される秘密は何か──。

関連キーワード

関連記事

トピックス

スタッフの対応に批判が殺到する事態に(Xより)
《“シュシュ女”ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に》K-POPフェスで韓流ファンの怒りをかった女性スタッフに同情の声…運営会社は「勤務態度に不適切な点があった」
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(時事通信社/読者提供)
《動機は教育虐待》「3階建ての立派な豪邸にアパート経営も…」戸田佳孝容疑者(43)の“裕福な家庭環境”【東大前駅・無差別切りつけ】
NEWSポストセブン
未成年の少女を誘拐したうえ、わいせつな行為に及んだとして、無職・高橋光夢容疑者(22)らが逮捕(知人提供/時事通信フォト)
《10代前半少女に不同意わいせつ》「薬漬けで吐血して…」「女装してパキッてた」“トー横のパンダ”高橋光夢容疑者(22)の“危ない素顔”
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン