ライフ

十勝川温泉のポスターから「逆境を逆手に取るコツ」を考えた

十勝川温泉のポスターから何を学ぶか

 逆境は誰にでもどんな組織にも訪れる。その時、どう立ち回るかが“その後”を決定的に左右する。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 人類の長い歴史が証明しているように、ピンチはチャンスでもあります。ピンチだからと言って頭を抱えていても、事態がよくなるわけではありません。現状を踏まえて打てる手を打つことが、活路を見出す第一歩です。

 9月の胆振東部地震による風評被害で苦境にある十勝川温泉が10月10日に発表した観光ポスターは、その見本と言っていいでしょう。メインコピーは「元気ないです 十勝川温泉」。いちばん下には「ヒマ過ぎちゃって、サービス向上。」というコピーと「待ってるよ 十勝川温泉」という呼びかけ。真ん中には、仕込み中に試食に熱中する料理人、空いた部屋で英会話を勉強しながらバランスボールで美容体操に励む美人のおねえさん、見回りのついでに温泉につかっているスタッフの写真が並んでいます。

 この写真ではけっこう元気そうには見えますが、きっとたいへんな状況に違いありません。それにしても、ヒマを前面に押し出すのは、かなり大胆です。どういうつもりでこのポスターを作ったのか、音更町十勝川温泉観光協会事務局の窪浩政次長に伺いました。

「地震の影響で、1万人以上の宿泊キャンセルがありました。団体のキャンセルだけじゃなく、道内からのお客さんも『今は旅行を控えよう』と動きがパタッと止まって、どの宿泊施設もかなりのピンチです。でも、こんな時こそ心に余裕を持って、ピンチをチャンスに変えていこうじゃないかと、現状を逆手に取ったポスターを作ることにしました」

 行政や経営者ではなく、従業員が苦境を乗り切るために元気に明るくがんばっている姿を伝えたい、という意図も込められているとか。ああ、なんて素晴らしい! しかし、ポスターのことが地元の新聞に載った日の朝、さっそく観光協会に「あんたら、何考えてんの!」という批判の電話が一件あったそうです。

「ある程度の批判は、作っているときから覚悟していました。賛否両論あるかもしれませんが、まずは多くの人に十勝川温泉を知ってもらうことが大切だと思っています。こんなふうに取り上げていただくことが、町を元気にする何よりの活力なんです」

 たしかに、同じ北海道でも登別温泉や洞爺湖温泉に比べれば、十勝川温泉の知名度は失礼ながら今ひとつです。しかし、石炭になる前の植物の化石である亜炭や泥炭層を通って湧いているお湯には、お肌にいい成分がたっぷり。バスクリンの「日本の名湯」シリーズの「くつろぎ美人湯」の5つにもメンバー入りしています。

「場所が不便というイメージがあるかもしれませんが、帯広空港から車で30分ぐらい、千歳空港からでも高速があるので2時間半ぐらいです。10月30日からはひとり一泊2000円の宿泊助成が受けられる『音更ふっこう割』もスタートします。町民も旅館のスタッフも日常的に美肌の湯につかっているので、美人が多いと個人的には思っています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
『国宝』に出演する横浜流星(左)と吉沢亮
大ヒット映画『国宝』、劇中の濃密な描写は実在する? 隠し子、名跡継承、借金…もっと面白く楽しむための歌舞伎“元ネタ”事件簿
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン