ホームセンターでセメントを数袋購入していたことも判明。あまりの重さに自分では持ち帰れず、ホームセンターにタクシーを呼んでいたのだ。運転手が女のことをよく覚えていた。
死体損壊遺棄容疑で再逮捕してもなお、女は依然として口を割らない。その上、遺体の損傷は激しく白骨化していたため、死因や殺害方法が特定できなかった。凶器の現物も出てこない。
凶器がわからない、凶器が出てこないでは、いつ、どうやって殺したのか推測できても断定できない。女の弁護団はこの点を突いてきた。死因が特定できないのなら、殺人罪は適用できないと主張したのだ。
凶器を捜すため、刑事らは、事件前、女がどこで何を購入していたのか捜査する。レシートなどから女が購入していた物が判明、それとそっくり同じ物を揃えた。捜査本部の机に金づち、鉈、のこぎり、ロープなどがずらりと並び、誰が見ても女が殺害計画を立てていたと推測できた。
「こいつしかいないということは、殺しを扱っているとわかるんだ。殺人を犯す人間はあまたいる。しかし、遺体を切断する人間は多くない。遺体を切断できる人間なら殺人ができるだろうし、人を殺すだろう。そんな単純な理屈だけどね。殺すということと遺体を切るということは、意味が違うんだよ」
刑事らは揃えた品物を、様々な角度から見て、じっくりと脳裏に焼き付ける。手で触って形や大きさを感覚で覚える。これらの品がどのように使われた可能性があるかを考え、理解した上で証拠品の捜査を行うのである。
「女は金のことからガイシャと口論になっていた。殺して彼の金や年金を奪い盗ろうと計画をしたんだな。ガイシャは喉仏が折れていたから、おそらくロープを使って後から締め、頭を殴って殺したんだろう。その後、台所で遺体を切断、床下の収納を開け、備え付けられていたプラスチックの箱を外して、さらに床下を少し掘った。遺体をその穴に入れ、上からコンクリートを流し入れて蓋をしたんだ」
そして女はその上に絨毯を敷いて、他の男が待つ家へと向かったと考えられた。