「犯人グループに女性がいるというのはちょっと面白いですね。当初から女性の関与は言われていました。というのも、犯行に使われた車の中にイヤリングが片方だけ落ちていたんです。だから女性が乗っていたのだろうという推測です。
ただ、“犯人です”というなら、もっとディテールを書いてほしかった」
『三億円事件の真犯人』の著書をもつジャーナリスト・殿岡駿星氏が続ける。
「事件発生から10年とか、時効から20年とか、そういった節目に過去にもこういった告白はあった。作中のSという少年が犯人という説は根強いです。だが、この手記はSが犯人ではないという。この説には私も同意するところがあり、新しい視点ともいえます。ただ、細部の記述が少ない。本物と言うなら、強奪されたナンバーが判明している五百円札を見せてもらいたい」
前出の近藤氏は、Sの恋人だった女性に接触した経験がある。小説で言えば、まさに実行犯だった京子だ。
「作品中では大学生となってますが、当時は高校生で、ちょっとした不良少女でした。それにSは『省吾』となっていますが、実際にはSは苗字のイニシャルなんですよ。そういった点を考えると、信憑性に欠ける」
前出の大谷氏も、冷静な見方に終始した。