芸能

篠田三郎 幕末の人物を演じると俳優は役から魂を与えられる

篠田三郎が印象的な役を振り返る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・篠田三郎が、吉田松陰、源実朝、飯富昌景を演じた思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 幕末の長州藩を舞台にした一九七七年のNHK大河ドラマ『花神』で篠田三郎は吉田松陰に扮した。その苛烈な芝居がドラマ前半を盛り上げている。

「最初は吉田松陰のことは名前くらいで、ほとんどよく知りませんでした。それで司馬遼太郎さんの『世に棲む日日』を読んだところ、感動しましてね。あの時代の人たちは、とても感情が豊かだった。武士だから泣かない──というのはなくて、よく泣き、よく笑った。そして志士の多くは若くして亡くなっている。太く短く生きているんです。ですから、自分もそうですが、俳優はあの年代をやると役から魂を与えられて張り切るんです。やりがいがあるんですよ。

 寅次郎と名乗っていた若き日の松陰は、当時の日本の現状を知るために萩から出向いて遠い東北にまでよく旅をしています。とても行動的な人間でしたので、僕も演技どうこうではなくそんな松陰に少しでも近づきたく体当たりでやっておりました。例えば息を切らして登場する場面では、出番の十秒くらい前まで腕立て伏せをして本当に息を切らしながら出ていました」

 鎌倉幕府の草創期を描いた七九年の大河ドラマ『草燃える』では三代将軍の源実朝に扮した。おっとりした公家的なイメージの強い実朝を、結果的に狂気に憑かれていく悩めるインテリとして演じている。

「実朝のときは、どこかでまだ吉田松陰を引きずっていました。実朝は穏やかな、顔でいえば狸、丸顔で鷹揚としたイメージがあると思うんですが、松陰を引きずっているものだから、そういう激しいところが出てしまったように思います」

 八八年の大河ドラマ『武田信玄』では武田家重臣・飯富(山県)昌景を演じた。児玉清が演じる兄・虎昌と不倫関係の女(小川真由美)との対決シーンでは緊張感ある芝居をしている。

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン