それどころか、来春からは治療目標が変わり、将来的に高血圧治療を受ける患者が激増する可能性がある。すでにこのことが一部で報じられたことで、患者の側に戸惑いが広がっている。
「血圧140~150台を行き来しながら10年以上降圧剤を飲み続ける生活にうんざりしている。つい数年前には『血圧147まで健康』という報道が出て、どうなるのかと見守っていたらいつの間にか話を聞かなくなって、最近になって『血圧は130まで下げなきゃダメだ』って報道が出てきた。いったい何を信じればいいのか分かりませんよ」(65歳男性)
最大の問題点は、診断基準や治療目標に確固たるエビデンスがないということだ。高血圧の予防治療を専門とする新潟大学名誉教授の岡田正彦氏も、疑問を持っている。
「私はガイドラインに示されている診断基準の根拠となる全文献を精査しましたが、その基準内の人がどれだけ長生きしたかというデータに基づいたものはいまだにない。高血圧学会が発表する基準値の根拠は、日本人間ドック学会が示したデータに比べて正確とは言い難いと思っています」
今回、アメリカで基準値を引き下げる根拠となった臨床試験も、決定的なエビデンスを出しているわけではない。