一般に、販売店と損保会社の間では、瑕疵(かし)保証責任保険という損害保険が取り交わされている。保証期間延長サービスの利用者が支払う延長保証料は、この保険の保険料に充てられる。
保険料は、「低すぎず、高すぎず、不当に差別的でないこと」という原則に基づいて設定されている。従って、損保会社は故障の発生確率や、故障が発生した場合の故障の程度を想定し、これをもとに適切に保険料を設定しているはずだ。
しかし、製品の1ユーザーに過ぎない購入者が、その製品の故障の発生確率や、故障の程度について知るよしもなく、保険料と補償の金額面での関係は具体的にはわからない。結局、保証期間の延長をするかどうかは、直感に頼って判断するしかない。それでは、どうすれば少しでも納得のいく判断がくだせるだろうか。
ここで、行動経済学で行なわれた、ある実験を紹介しよう。お金の支払いについて、次の2つの選択肢があるとする。
(1)500円を支払わなくてはならない。
(2)0.1%の確率で50万円を支払わなくてはならないが、99.9%の確率で1円も支払わなくてよい。
どちらかを選ばなくてはならないとしたら、あなたはどちらを選ぶだろうか。実験では、(2)を選ぶ人のほうが多い、という結果が出た。「確率0.1%の不運などめったに起こらないし、それが自分の身に降りかかることなどまずない」などと、楽観的に考えた人が多かったのだと考えられる。
ところが──。