その影響力は五輪準備だけにとどまらない。平田氏が提唱するスポーツの産業化は安倍政権の「日本再興戦略」にも取り入れられ、政府はスポーツ市場規模を2025年に現在の3倍の15兆円にする目標を掲げた。
その柱のひとつがスタジアム・アリーナ改革だ。全国には五輪競技場とは別に約60か所のスタジアム・アリーナ建設構想があり、経産省やスポーツ庁は地域振興として老朽化した自治体のスポーツ施設を地域の中心として建て替えや新設をすすめ、そのうち20か所を2025年までに整備する計画だ。平田氏はその狙いをこう語っている。
「東京で言えば、23区に23個あってもいいくらいです。試合開催以外に用途を広げていくこともできますし、災害が発生した際は避難場所にもなるし、非常食なども備蓄できる。これからのスタジアム・アリーナは、みなさんにとって欠かすことのできない場所になっていく」(スポーツ報知2018年3月25日)
東京五輪後にスタジアム建設ラッシュが起きる。
2つの組織を束ねるブレーンもいる。元国交省住宅局長で、退官後、野田政権の内閣官房参与から安倍政権の「首相補佐官」に起用された和泉洋人氏だ。
現在、政府の医薬品・医療機器産業育成戦略を取り仕切る「健康・医療戦略室」室長と、地域の古民家を再生して観光資源とする「歴史的資産を活用した観光まちづくり連携推進室」室長という全く分野が違う2つの組織の長を兼ねている。
しかし、首相補佐官は参与と同じ首相直属のスタッフ職であり、官僚への指揮権は与えられていない。