「ARBは体内の水分量によって効き方が変わります。加齢によって体内水分量が少なくなる高齢者の場合は、血圧の急降下を招く恐れがある。それによってめまい、ふらつきが起き、転倒による骨折などの危険が出てくる。自動車や自転車の運転をする場合のリスクにも心配があります」

 では“別のタイプの降圧剤に替えればいい”かといえば、それも簡単ではない。石原医師によれば、「利尿薬」にもARB同様の「効き過ぎリスク」が指摘されるという。

 日本高血圧学会理事で、獨協医科大学循環器・腎臓内科主任教授の石光俊彦・医師は、「患者がACE阻害薬でもARBでもない薬を希望した場合には、カルシウム拮抗薬を処方するでしょう」と語る。

「ACE阻害薬やARB、利尿薬と違って、年齢に関係なく降圧効果を発揮します。ただし、血管そのものを拡張するはたらきを持つカルシウム拮抗薬は、心臓の収縮力を弱めてしまう可能性があるため、心臓疾患の心配がある患者は服用できないというデメリットがあります」

 このように代替薬にはそれぞれ一長一短がある。「肺がんリスク」という心配から解放されても、それぞれに別の重病を招くかもしれないリスクを負うことになる。

 ならば、薬を“替える”のではなく“減らす”という選択を考慮するべき──そう唱えるのは前出・岡田医師だ。

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