肺がんとの関係は「あるともないともいえない=分からない」というのが、現時点における医学界の見解のようだ。だが、その状況で困惑するのは、実際にACE阻害薬を服用している高血圧患者である。
日本高血圧学会が定める「高血圧治療ガイドライン」(最新は2014年版)では、降圧作用を持つ第1選択薬として、「ACE阻害薬」「ARB」「カルシウム拮抗薬」「利尿薬」の4種類を示している。
降圧剤は「血管を広げて血圧を下げるタイプ」と、「血液量の増加を抑えて血圧を下げるタイプ」に大別される。ACE阻害薬は、血管を収縮させるホルモン「アンジオテンシンII」を作らせないことで、「血管を広げて血圧を下げるタイプ」にあたる。「ARB」は同ホルモンを働かせない作用があり、効き方がよく似ている。
飲み続けると肺がんになるかもしれない。だが、飲まなければ高血圧を抑えられず、脳卒中や心臓病を発症する恐怖に襲われる──どうすればいいのか。北品川藤クリニック院長の石原藤樹・医師はこうアドバイスする。
「私が患者であるとすれば、ACE阻害薬で血圧を安定的にコントロールできているなら慌てて薬を替えることはしません。少なくとも(今回の論文とは)別の調査で肺がんリスクについてのエビデンスが出るまでは継続するでしょう。
それでも“不安だからどうしても違う薬がいい”と感じたら、ほぼ同じ作用を持つARBを選びます。ARBには空咳の副作用はありません」
ただし、薬を変更すれば別の懸念が生じる。ARBには「効き過ぎる」という問題があり、作用が服用者の体質や持病、年齢などに左右されるからだ。石原医師が続ける。