国内

リフォーム詐欺が再び隆盛 独居老人が狙われている

リフォームに関わる特殊詐欺が再び増加している

「世に盗人の種は尽きまじ」は、浄瑠璃や歌舞伎の題材としても知られる大盗賊・石川五右衛門の辞世の句だが、21世紀のいま「この世に詐欺の種は尽きない」と、次々と商材を変えながら詐欺を続ける人たちがいる。2000年代に激増し、いったんは減少したリフォーム詐欺被害がいま、再び目立ち始めている背景について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 久々に、それこそ十何年ぶりに「リフォーム詐欺」という言葉を新聞で見た。しかし、驚きなどの感情はほとんど芽生えない。もしやと思い取材をすると、そこにはやはり「原点回帰」の傾向が見られた──。

 嘘を言って不要なリフォーム工事契約を交わしたとして、神奈川県横浜市のリフォーム会社経営者の男らが特定商取引法違反で逮捕された。愛知県内のマンションに住む女性らに「階下に何かがあってからではお金がかかる」などと虚偽の説明をし、代金約390万円をだまし取ったとされている。

 この「リフォーム詐欺」は、2000年代前半に隆盛を極めた、ひと昔前の「詐欺」と内容がそっくりだ。高齢者宅を狙い撃ちし「床下に湿気が溜まり家がダメになる」などと嘘を言って、必要のない高額な床下換気扇などを売りつけたり、市価以上の高額契約を取り付けて粗悪品を用い、手抜き工事しかしない外壁業者が勃興していたのだ。

 これら詐欺の手口について、メディアが実情を報じたことで、業者は相次いで検挙され、いつの間にか「リフォーム詐欺業者」は消えたかのようにも見えた。

 しばらく後に、いわゆるオレオレ詐欺(特殊詐欺)事件について取材を続けていた筆者は、「元リフォーム詐欺業者」のうち少なくない人数が、場所を変えて詐欺に加わっていると気が付いた。インフルエンサービジネスやねずみ講まがいビジネス、流行の仮想通貨投資ビジネスに関するトラブルを取材すると、リフォーム詐欺やオレオレ詐欺の取材をしていた時と同じメンツが、まるで「金太郎アメ」を切るかのごとく出てくる。不謹慎ではあるが、笑えるほど同じ顔ぶれに出くわした。当時取材に答えてくれた男性に、改めて電話で話を聞いた。

「リフォームの前は車金融や090金融ですよ。それが潰されてリフォームになったけど、老人狙ったやり口を使ったヤツってのは、それが最初なんじゃないかな?リフォームがつぶれてオレオレになり、オレオレがヤバくなって投資詐欺とか。金融も最近少しずつ出てきてるけど、昔より(規制や取り締まりが)キツイでしょ?だから不動産販売とか、スルガの話もまるっきりそれ。リフォーム詐欺もその一環だよね。巡り巡って、またリフォームってこと」

 オレオレ詐欺の取材を通じて知り合った男性は、かつて090金融など、無許可の「闇金業」で財を成した人物であった。その後、リフォーム詐欺を行う「事業」でさらに莫大な財を築いたあと、首都圏で飲食店やアパレル店を運営する「経営者」になった。「いいことをするためには悪いことも必要」と、自分勝手なロジックを展開していた彼も今や「実業家」。慈善事業にも参入して、自身で「身のロンダリングができた」とうそぶくほどだ。そんな彼が指摘するのは、詐欺は堂々巡りであり、いつの時代もやり方や商材は変わらない、ということだ。

 自家用車で乗り付けた客に無許可の業者が車を担保に金を貸す「車金融」、連絡先がいわゆる「とばし携帯」で発信者や事業者がすぐにはわからない090金融などの「闇金融」業者の摘発が相次いだあと、男性はすぐに身を引き、悪質リフォーム業者に転身した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン