リフォーム事業では、金を持っている戸建ての老人を狙い撃ちにしていたが「金はふんだくっているかもしれないが、老人の話し相手になり、分かったうえで契約してもらっている」と開き直り、高額契約を次々に取り付けていた。リフォーム事業で得られたのは「老人がカモになる」ということ、そしてカモになる「老人リスト」を作れば、それもまたカネになる、という知識だったという。
「不動産に証券、先物などの投資詐欺はそれこそ戦後からあったわけで、ターゲットは金持ちだった。現代は、金持ちと言えば老人。そりゃ必然的に老人を狙えとなる。最初は老人からいかにうまく金を盗るか…それこそ“騙された”と気づかせず盗るかということだったけど、締め上げられて(※取り締まりや摘発が厳しくなって)、でも甘い密の味知ってる連中がやめられなくてオレオレ(詐欺)始めた。
スキームは全く一緒でしょ?最近は老人も貧乏になって、オレオレも監視されまくりで、小金持ちや若者をターゲットにして、投資だ不動産だってカネを巻き上げてきたけど、それも上手くいかなくなってきたからね。また老人から“上手に”盗ろうって連中がリフォーム(詐欺)やってるわけ。オレオレで名簿の重要性が嫌というほどわかったから、不動産業者から持ち出された名簿が結構出回っていて、それをもとに独居老人のところを訪問する感じだね」
まさに巡り巡って復活した「リフォーム詐欺」というわけである。だが、昔のように地区全体を一軒一軒しらみつぶしに訪問しては、契約を取り言いつけるというローラー作戦は実施していない。あらかじめに入手した名簿を参考に、騙せそうなバックグラウンドを持つ人々を、老人や若者に関係なく狙っているというから、ある意味で「進化」しているともいえようか。特殊詐欺に関しては、実は平成21年に認知件数、被害額ともに前年の半分近くまで減少していた。男性は言う。
「ちょうどそのころ、トバシの携帯や口座を用意する“道具屋”の存在に当局が注目し、商売ができ辛くなっていました。ニュースでもよく取り上げられたでしょ。でも喉元過ぎれば何とやら、です。昔も今も道具屋がいないと成り立たないし、新興勢力の道具屋が暗躍してるんです。忘れた頃を見計らってやるんです」
確かに、平成21年度版の警察白書にも、かの「道具屋」に関する記述があり、その後道具屋の摘発が相次いだ。犯罪の根を絶つという意味では、当局の見立ては正しかったのだろう。特殊詐欺の件数は一時的に減ったが、その後は増加傾向にあり、やはりいたちごっこの様相だ。次の被害者はあなたか、あなたの大切な人かもしれない。こうした詐欺師側の言い分、実情を十分に知っておく必要がある。