「音楽を十年やって、残りは俳優をやっているんですが、芝居をするという一つだけでは続かないところがあるんですよ。横から入ってきた人間としては。
何が続く原動力かといったら、大きい意味での芸能界というところで、こんな小さな僕がどうやって何を通していくか、ということです。僕はうっかりすると何かに潰されてしまうような存在です。人によってはそれが怖くて大きな事務所に入って守られる。僕は自分の事務所を始めてからもう二十年以上経ちますけど、そこでの闘いみたいなのがある。俳優業だけではなく、どうやって正論を通していくのか、とか。それがずっとあったから、続ける原動力になったと思います。単に仕事があって、『はい、やりました。褒められました』って、それだけだったら意外と続かなかったかもしれません。
一番いい時を続けるんだったら、ザ・タイガースを辞める必要はなかったわけで。物凄い人気があったのに解散したんですが、俳優になっても何かそういうものがあります。俳優業としては安定しています。でもその安定に乗っているだけではつまらない。そういうものと違うものを相変わらず持ち込んでいきたい。それには、いい人、いい作品と出会うこと。その結果が、四十年以上やってこれたということなんだと思います」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2018年11月30日号