外国人によるサイバー犯罪も増加傾向にある。昨年10月、中国籍の男性2名と日本人男性1名が、インターネットバンキングを狙ったフィッシング詐欺事件で逮捕された。このグループは全国で93件、被害総額約2億5000万円を不正送金させていた。しかし、逮捕されたのは「出し子」だけであり、指示役の逮捕には至っていない。
窃盗や詐欺だけではない。数は少ないが、外国人による殺人や強盗、強制性交(レイプ)などの凶悪犯罪も起きている。昨年は殺人35件、強盗59件、強制性交等40件が検挙された。
私もかつて、中国人によるレイプ事件を担当した。この犯人は他人になりすまして日本へ不法入国し、バイト先で顔見知りとなった女性の後をつけ強制性交に及んだ。被害者は合計4名。犯人は日本語ができなかったため、中国人留学生ばかりを狙ったという。外国人犯罪の被害者は日本人だけでなく、来日外国人さえもその標的となるのだ。
また、外国人被疑者・被告の取調べや公判に携わる司法通訳人にも課題が多い。昨年は中国人男性が関与した殺人事件の取調べで、誤訳が明らかとなった。誤訳は冤罪を生む危険がある上、司法通訳人には資格が必要ないため、犯罪組織の息のかかった人物が供述を捻じ曲げようと通訳として売り込んでくる恐れもある。
さらに、最近の外国人犯罪は日本人と比べて共犯事件の割合が高く組織的に敢行される傾向がある。しかし、残念ながら、縦割り組織の警察は、組織犯罪捜査が苦手なのが実情だ。
来日外国人の数が増えれば、その分、彼らによる犯罪が増えるのは道理だ。それに対応できるように警察や入管の体制をいま一度考えていかなければならない。
【PROFILE】しみず・まこと/1960年兵庫県生まれ。佛教大学卒業後、兵庫県巡査を拝命。後に中国語のバイリンガル捜査官として外事警察、刑事警察など31年間奉職し、警部で退職。現在は一般社団法人関西司法通訳養成所の代表を務める。
●取材・構成/浅野修三(HEW)
※SAPIO2018年11・12月号