ライフ

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之氏が選ぶ食べ物の本5冊

『孤独のグルメ』原作者の久住昌之氏

『孤独のグルメ』の原作をやっていると、グルメな人だと思われがちだが、ご馳走にはそんなに興味が無いし、おいしい店も知らない。ただ、人が頭の中でああだこうだ考えながらものを食べている有様が、なんだか滑稽で面白いのだ。だから「孤独の」なので、他人のグルメはどうでもいい。

 そんなボクが好きな食べ物の本は、ボクの先生でもある赤瀬川原平さんが書いた『少年とグルメ』。この本は今『少年と空腹貧乏食の自叙伝』(中公文庫)という文庫になっている(実はボクがそのあとがきを書いている)。

 赤瀬川さんが若くて貧乏だった時の話だ。学生時代、友達とパン屋からチョコボールを瓶ごと盗んでそのあまりの甘さにまいる話。アパートの隣の部屋に住む学生の味噌を盗んで、そこいらの大根の葉っぱの味噌汁を作って飲んだ話。たぶんダシなんかとってない。戦時中にひもじくて鼻くそを食糧として食べた話。友達とガムの回し喰い(回し噛み)をした話。先輩が、食パンにバターを塗る代わりに、豊年サラダオイルをたらして食べる話。

 ドロボーで、不潔で、貧しくて、まずそうなのに、なんともおもしろく、豊かで、結局おいしそうだ。この本はボクの宝物だ。食べ物の話は、いつだってここに戻る。おいしいって、なんだろう。ご馳走ってなんだろう。そう思うとこの本を読み返す。

 そんなに何冊も読んでいないけど、池波正太郎の食べ物本も面白い。でもやっぱり根っこには、若く貧しい頃の食べ物の味がこびりついている。食や好きな映画のことを絵と文で描いた『ル・パスタン』(文春文庫)は、池波さんの味のある絵がカラーでいっぱい入ってるので大好きだ。今日は骨が折れる仕事だぞ、という時に食べるニンニクうどんのおいしそうなこと。子供の頃、風邪を引くと母親が作ってくれたスープ雑炊も読んでいるだけでたまらない。

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン