小倉記念病院(福岡・北九州市)は医療機器メーカーと共同研究で、動脈の詰まりがないかをAIが診断するシステムの開発に乗り出し、心筋梗塞などの診断迅速化を目指している。
がんの確定診断などのための「病理診断」でもAI導入の取り組みが進む。広島大学は2018年8月、専門家によるデータ解釈をAIに学習させる特許を持つアドダイスと共同研究で病理診断支援のAI開発も始めた。同大学病院病理診断科長・有廣光司教授はこういう。
「私はAIが深層学習するための様々なバリエーションの病理標本を提供していますが、AIが高い診断能力を持つようになれば、病理医の判断作業は迅速化され、仕事の精度は上がると期待できるでしょう」
医師も人間だからミスがあり得る。だからこそAIに期待が集まるのだ。
山口大学は2018年4月に「AIシステム医学・医療研究教育センター」を開設し、人間が見落としがちな病気の予兆などを発見する研究を進めている。理化学研究所などでは、AIでがんの悪性度を測り、各患者に最適な治療の選択を行なうシステムを開発中だ。
「病気が予防できれば無駄な手術や投薬も省くことができる。治療に伴う患者の肉体的負担を軽減し、個人の医療費負担を抑えることにもつながる」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)
AI医療診断機器は薬機法で未承認のため、「臨床試験段階」の病院が多いが、確実に浸透し始めている。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号