最初の数曲は馴染みの薄い曲だったためか、前日の宮崎同様、鹿児島でも東京公演などと比べるとやや盛り上がりに欠けていた。

 しかし、1981年の大ヒット曲『悲しみTOOヤング』で観客はヒートアップ。その後、田原がステージから降りて会場を一周する。大歓声が起こる中、高齢者に「お母さん、おいくつですか?」と話し掛ける。マイクを向けられた女性が「テレビで毎日…」と興奮すると、田原は「テレビそんな出てないから!」と笑いを誘った。

 その後、『抱きしめてTONIGHT』で盛り上がりは最高潮に達した。MCになれば笑いを取り、イントロが鳴れば真剣に踊り出す。その姿に、観客は魅了されていった。

『抱きしめてTONIGHT』の後、『ダイハツ・シャレード』のCMソングだった『君なしじゃいられない』というバラードを歌い上げる声に、会場は聞き入っていた。デビュー当時の歌が下手というイメージを引きずったまま来場した観客もいただろう。だが、28年ぶりの鹿児島で、その印象は拭い去られたはずだ。

 続く、2014年のナンバー『Bonita』で華麗に舞い、ひざまずいて帽子に手を当てるラストポーズが決まると、大ヒット曲『悲しみTOOヤング』を歌い終わった後のように、大きな拍手が起こった。

 売上を見れば、『Bonita』は一般的には知れ渡っていない。しかし、この曲で田原俊彦が醸し出した世界観に会場は沸いた。ヒット曲だけでなく、有名ではない曲でも盛り上げる。これぞ、スターの証だった。

 ステージは中盤に差し掛かっていた。衣装替えのために引き下がった田原は『風の上ならSo Happy…』のイントロに乗って、ローラースケートで滑走してきた。1984年、カプリソーネのCMを再現した姿に、またしても大きな歓声が沸いた。

 57歳の田原俊彦がローラースケートでステージ上を回り続ける。かわいらしいイメージの強かった20代前半の歌を、3年後に還暦を迎える男が歌っても違和感がない。これぞ、“生涯アイドル”ではないか。

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