しかし、本音はやはり仕事をしたくないAさんですから、どうしても身が入らず、だんだんホワイトな環境に甘えて、業務を怠るようになってしまいました。職場の人に「最低限のことはやってくれないと……」と繰り返し注意されるようになってしまったのです。本人も「もう、どうでもよくなってしまったというか、実質的に戦力外通告なのかもしれません」と投げやりです。Aさんの言い分はこうです。
「自分がこうなってしまった原因は、大学時代の過ごし方にあると思っています。授業とバイトが中心で、同年代としかコミュニケーションを取ることがありませんでした。確かにそれなりに楽しくて、気楽だったのですが、“社会”とのつながり方はいまだによくわからないんです」
「社会を知るためにOB、OG訪問などはしました。でも、今になって考えると、就活時期を迎えて急にスーツ着て、誰かに会って話を聞かせてもらうって、すごく自分勝手なことだったなって思うんですよね。社会に出て気づいたのですが、同じ社会人といっても、優秀さはピンキリじゃないですか。本当に優秀な人って、本社の中でも、50人に1人、100人に1人しかいない。学生時代は、そんなこともわからなかったんです……いえ、少しはわかっていたんですけど、行動する勇気がなかったというか。努力することを避けていたんだと思います。とにかく、今は生きていかなきゃいけないから、今からでもまっとうに働ける人間になりたいです」
Aさんの迷いは、大企業でも、ホワイトなベンチャー企業でも、すぐには晴れません。
●「背伸び」したことで人との出会いに恵まれたBさん
刻を大学1年生まで巻き戻せば、Bさんも、Aさんと同様、「やりたいことは特にない」学生でした。しかし、友人とばかり付き合っていたAさんとは異なる点がありました。
「学生同士の付き合いはそこそこでいい」と考え、サークルには入らず、授業が終わるとすぐにバイト。バイト選びの基準は、「面白い大人がいる仕事」でした。大学生がよく選ぶ居酒屋や塾講師ではなく、ライターやソフトウエア開発など、大学生があまり選ばなそうな職場を中心に、10種類以上のバイトを経験しました。
「大学4年生になるころには、社会人1年目、2年目の正社員の方よりも、自分のほうが仕事をできていたかなという実感はありました。もちろん社員の方には社員ならではの苦労があったと思いますが」とBさん。
「今思うと、ちょっと背伸びをしすぎた“痛い”こともありました。ある時、優秀な人を見つけたので、『付き人をさせて下さい!』と言ったら、『付き人なんていらないよ、こっちは忙しいんだよ』と、追い返されてしまったこともありました」
Bさんは、それでもめげることなく行動していました。