一方、アメリカではここ2年以上、金融引締め(利上げ)が行われてきた。ただし、2019年には一段落するという見通しがある。アメリカの利上げが停まると、日米の金利差がこれ以上は開かない、という状態になる。それは即ち、円安が進みにくいという解釈につながる。円安が進まないと、日本の景気にはよろしくない、というのが一般的な見方だ。
そうでなくても2019年は世界的な景気後退が起こりそうだと言われている。アメリカと中国の貿易戦争も、世界の経済にとっては強烈なマイナス要因だ。
国内の不動産市場に目を転じると、都心の事業用地は相変わらず値上がり傾向だ。低金利を背景に、ホテルやオフィス、ワンルームマンション開発業者が高値を厭わずに事業用地を仕込んでいる。オフィスの空室率にいたっては空前の低レベル。
表面的な様相だけを眺めていると、2019年も不動産市場には崩れる要素はない。ただし、活況を呈しているのは一部都心エリアのみである。
近郊から郊外、さらには地方の住宅需要は萎む一方である。無料でも引き取り手のない老朽住宅が恐ろしい勢いで増えている。困ったことに、こういう問題には解決策がない。事態は時間が経過するごとに悪化する。
このように日本の不動産市場は非常にバランスの悪い状態になっている。中でも、都心のマンション市場は新築も中古も経済合理性で説明できないバブル価格が付いたまま、目に見えて動かなくなっている。
特に金融商品のような買われ方をした新築タワーマンションは、竣工後も空家だらけ。表面的には完売しているものの、購入者は売却するのか、賃貸に出すのか躊躇しているケースが多い。
マンションの本来の役割は住宅である。金融商品ではない。現在、金融商品のように扱われている都心や湾岸エリアのタワーマンションも、いつか必ず住宅に戻る。
鉄筋コンクリートで造られているマンションは年月を経ることで劣化し、やがて使えなくなって取り壊すことになる。金融商品の役割を持たせるには、ふさわしくない造形物だ。特に、土地の資産価値が薄い湾岸埋立地のタワーマンションを、あたかも金融商品のように扱っている現状は、何とも異常ではなかろうか。