芸能

菅田将暉の『3年A組』 純文学を連想させる世界観

生きることの不条理に迫る(番組公式HPより)

 新しいクールが始まるこの時期は、「推し」を見極める重要なタイミングだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は、まず2つの作品に注目した。

 * * *
 2019年の幕が開けました。ドラマが続々とスタートしているさなか、新年にふさわしい斬新なチャレンジや瑞々しい切り口の作品が登場しています。ドラマという「架空世界」の話なのに、現実にじわじわ滲み出してきて、見ている人を揺さぶる迫力のある作品がいくつも。まずは「動」と「静」の2作品に注目しました。

●『3年A組-今から皆さんは、人質です-』

「今から皆さんには、人質になってもらいます」

 ドラマはセーショナルな言葉で始まった。菅田将暉主演、武藤将吾書き下ろし脚本の『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系日曜夜10:30)。6日に放送された第一話は凄まじい余韻を残しました。

 物語は──卒業10日前、高校3年生の教壇に立った謎の教師・柊一颯(菅田将暉)。「俺の最後の授業を始める」と言うと、爆発物を破裂させ教室は閉鎖空間に。出口はふさがれ窓も強化ガラスで割ることができず、救出もかなわない。

 柊は自ら警察に電話をかけ、立て籠もりを通告。そして生徒たちにある質問を出した。

「クラスメイトの景山澪奈(上白石萌歌)が自殺した理由を答えろ」

 その質問に夜8時までに正解を出せなければ誰かに死んでもらう、と宣言──。何という破天荒な設定でしょうか。ありえない、むちゃくちゃ現実離れした舞台。だからフィクションとして存分に楽しめばいい。一人の生徒の死の謎を解くサスペンスものと、多くの視聴者は納得するかもしれません。

 しかし、どこか、何かが違う。このドラマ、単なる犯人捜しの謎解きものとは、どこか異質なのです。

 対岸の火事を傍観するようなお気楽な聴衆ではいられない。視聴者も気付くと安全圏から引きずり出され、一人ひとりがふと自分の学生時代を思い返したり、集団の中で芽生える悪意について考えさせられたり。ヒリヒリした現実感覚が漂うのです。

 他人をのけ者にしていく危険な空気。無言のうちに伝染していく悪意。自ら設定したキャラの殻の中に逃げ込んで、現実を見ないふりをするズルさ。ウソと知っても話を過剰に盛り、他に伝えてしまう悪戯。それらがじわりじわりと人を追い詰めていく残酷なプロセス……。

 第一話では、澪奈の友達のさくら(永野芽郁)が過去を振り返る。「他人に同調し、澪奈を無視し距離を取ってしまった」と明かす。「それが彼女が自殺した原因です」と回答する。しかし教師・柊はその答を間違っていると完全否定し、結果として男子生徒をまず一人殺していく……。文字で書くとエグい。けれども、ただ刺激的なエグさグロさを狙った娯楽作品とは思えないから不思議です。

 例えば、さくらが澪奈から渡された手紙を読み返すシーンは、透明感が漂っていて印象的でした。

 澪奈の手紙には「もう友達になれない」という文字。滲んでいる。涙を落とした痕跡。さくらは初めて気付く。「友達になれない」のではなくて、泣きながら書いたのだと。実は「友達でいたいけれどそれができない」という辛い思いを、滲んだ痕跡が伝えていたのだと。

関連記事

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン