国内

大阪で発生「タワマン内児童相談所」設立反対運動の顛末

児童相談所が対応した子供の虐待件数の推移

 東京・南青山の一角にあった約1000坪の国有地を港区が約72憶円で購入し、約32億円をかけて「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設し2021年4月の開設を目指すという一大プロジェクトであることを発表。施設には児相のほか、子育て相談などができる「子ども家庭支援センター」や、養育が困難な母子家庭が入居する「母子生活支援施設」が併設予定であることも明らかになった。

 しかし、2018年10月、施設建設のために港区が開いた説明会で、反対派の住民が区の担当者に猛然と噛みついた。さらに、2か月後に開かれた6度目の説明会でも反対派住民は、「南青山は自分でお金を稼いで住むべき土地」「児相の子供が地域の学校に通うなら、格差を感じてつらい思いをする」などと一歩も引かない。こじれるばかりの騒動は、一向に収束の兆しを見せない。

 そもそも児相とはどのような施設なのかを知っている人は、どれだけいるだろうか。元東京都児相相談員で心理司の山脇由貴子さんによると、もともとは戦争で家がなくなった戦災孤児たちを救済するためにできた機関だったという。

「基本的な役割は、0才から18才未満の子供に関する相談を受けつけること。子育てやしつけ、知的障害の有無など、子供についてのあらゆる悩みを聞いて、解決を促す相談機関です」(山脇さん・以下同)

 だが、近年になり、2つの役割が突出して増加した。「児童虐待」と「非行」への対応だ。

「全国的に児童虐待の件数が増加するなか、虐待の通告を受けて子供の安否確認や保護をすることが児相のメイン業務となっています。また非行に走った子供を受け入れて、一時的に保護する役割も重要です」

 厚労省によると、2017年度に18才未満の子供が保護者から虐待を受けたとして、児相が対応した件数は過去最多の13万3778件。27年連続で増加している。その上、虐待で命を落とす子供は後を絶たず、2016年度に虐待で亡くなった子供は77人に達する。

 昨年3月、東京都目黒区で両親から虐待を受けたわずか5才の女児が“もうおねがい ゆるして ゆるしてください”と書き残して亡くなった事件は世の中に衝撃を与えた。こうした悲劇を未然に防ぐためにも児相の強化が唱えられたが、一朝一夕に対策は進むものではない。

 2016年には児童福祉法が改正され、東京23区が独自に新たな児相を設立できるようになった。だが都内には児相が11施設しかなく、業務を担う児童福祉士は2018年4月1日時点で273人のみだ。

「そこで港区でも児相の新設に踏み切ったわけですが、一連の流れのなかで、児相の設立に地元住民から反対の声があがった衝撃は大きい。現在、児相のない中央区や千代田区でも、今後は児相を設立する動きがあるはずですが、港区と同じトラブルが繰り返される不安があります」

 類似のトラブルは大阪でも起きている。2016年、大阪市北区にあるタワーマンション内に「北部こども相談センター」(児相)を開設する計画が持ち上がった。現場は梅田からほど近くて交通の便がよく、有名芸能人も居住する高級マンションである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン