カルピスの認知度がダントツになった半面、この商品の“1本足打法経営”だったことから、業績的には伸び悩んでいた時期も長かったのだ。派生商品として、「カルピスソーダ」などは出していたものの、希釈飲料というカルピスの特質上、矢継ぎ早にブランドエクステンションを展開することは共食いになるため、避けられていたのだ。
転機は1990年。そうした希釈飲料のジレンマで低空飛行の業績が続いていたカルピス食品工業は、食品大手の味の素の資本を仰いだ。一方、1980年代以降はコンビニや自販機が増えたこともあり、缶やペットボトル商品など、屋外へ持ち出す商品が多くなっていった。
味の素傘下となって資金面で余裕が出たこともあり、1991年、すでにカルピスを薄めてあってそのまま飲める、「カルピスウォーター」を発売。すると、年間で2000万ケースを売るお化け商品となっていく。前述の岸上社長は、そのカルピスウォーターの初代ブランドマネージャーである。
1990年代はカルピスウォーターの好調さをキープしたものの、2000年代に入ると消費者の飽きられ感が増し、再び苦戦。「ただの白くて甘い飲み物」「子供の飲み物」「カロリー高そう」といった消費者のネガティブなイメージが多くなっていった。
そこで今度は、カルピスが国産の生乳を原料に乳酸菌を発酵させた飲料として生まれた点を訴求し、少しずつだが持ち直していった。その後2012年、味の素が事業の選択と集中でカルピス食品工業をアサヒグループホールディングスに譲渡、2016年にアサヒ飲料と完全に合体して今日に至っている。
ここ数年は、2016年に「濃いめのカルピス」、2017年にカルピス初の機能性表示食品となった「カラダカルピス」、2018年は期間限定で「ヨーグルト&『カルピス』」を発売。100周年の今年は「ヨーグルト&『カルピス』」を通年販売するほか、「秋口には新発酵技術を使った、新機軸の商品も発売したい。より、コクみやまろみが出るカルピスの記念商品となる。期待してほしい」と岸上氏は自信をのぞかせた。
しかし、健康志向の高まりで乳酸菌市場は拡大しているが、それだけ競争も激しくなっている。血圧高めの人向けにカルピス酸乳「アミールS」などもあるが、他社も、たとえば明治はヨーグルトの「R-1」でドリンクタイプがあるし、ロッテは「乳酸菌ショコラ」をヒットさせた。
同業他社では、キリンビバレッジや小岩井乳業などキリングループ横断のプラズマ乳酸菌ブランド、「イミューズ」を本格展開し始め、市場争奪へ向けて虎視眈々だ。そこはどう戦うのか――。