「乳酸菌マーケットが伸びてきているのは事実で、その中で特徴づけのある商品はいまも生き残っている。カルピスは、日本初の乳酸菌飲料として100年やってきた実績があります。このブランド力の根幹は、まずは飲んで美味しい、健康にもつながると。そこをさらに伝え切れば、差別優位性を持って勝ち抜いていけると確信を持っています。
ただし、100年も歴史があるからと慢心はしていません。その時代に合ったマーケティングは永遠の課題ですから。また、カルピスのようなコンク飲料は、人によって濃いめが好き、逆に薄めが好き、あるいはフルーツ味が好きと、好みに応じて作ってあげることができる飲料で、作る時にその人の思いが入ります。エモーショナルというか、それがコンク飲料の特性で、このジャンルでは断然、カルピスがご愛顧いただいているという自負があります」(同)。
カルピスには、製造過程における副産物のアドバンテージもある。生乳から脱脂乳にする過程で取り除かれた脂肪分が「特選バター」の商品を生み、「価格は高いけど、菓子作りや料理でひと手間かけたい時に時々使っている優れもの」(あるシニア世代の主婦)といった声が多く、飲食店でもカルピスのバターを重宝しているところは多い。
このバターはカルピス40本分の生乳から1箱分のバター(450g)しか作れないため、アサヒ飲料にとっては業績を底上げするような商品ではないが、カルピスのイメージを高める意味では一役買っているといっていい。
創業者の三島海雲が、内モンゴルに渡航した際に体調を崩し、現地の遊牧民から不思議な酸乳をふるまわれて健康を取り戻したのがカルピス誕生の原点で、その酸乳からヒントを得て、日本初の乳酸菌飲料となったカルピス。100周年の今年は新商品ほか、いろいろな企画やキャンペーンの仕掛けで売り上げはかなり増えそうだが、本当の真価はその効果が薄れた来年以降、次の100年に向けた歩みで問われることになる。
●取材・文/河野圭祐(ジャーナリスト)