国内

生前退位問題で左派が沈黙した背景に天皇の存在感の変化

作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏

 終戦まで現人神(あらひとがみ)だった天皇は畏怖の対象だったが、人間宣言の結果、いまでは天皇は身近な親しみやすい存在となった。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が、皇室と日本について語り合った。

 * * *
片山:どんなに近づいても親しみを覚えても、日本人にとって天皇は神であることに変わらない。天皇をただの人間と捉えるのは、あまりにも原理主義的な考え方でしょう。神だったはずの存在が、人間のなりをして手を振ってくれるから、日本人はありがたがるわけです。

佐藤:だから、神がより身近になったわけですね。

片山:そう思います。ただの人間なら愛新覚羅溥儀のように1人の人民になればいい。でもそうはならなかった。そこに天皇制を廃して、共和制に移行しようという議論に進まない鍵があるような気がします。

佐藤:もしも60年代、70年代なら生前退位が問題になったとき、左派の論客や政治家は間違いなく共和制への移行の議論を行ったはずですからね。

片山:でも今回は誰も共和制に触れようともしなかった。それはご指摘のような天皇の存在感に変化が起こったからと言えますね。

佐藤:片山さんが『未完のファシズム』で明らかになさったように、戦前の日本のファシズムが未完で終わるのは、天皇の存在があったからです。日本で天皇を越えようとする権力を持とうとすると、必ず反発が起こる。だから国を1つに束ね切れなかった。

 その構図はいまも生きていると思うんです。私はのちに平成、そしてポスト平成は「未完のファシズム」ならぬ「未完の新自由主義」の時代と評されるのではないかと考えているのです。

関連記事

トピックス

快進撃が続く大の里(時事通信フォト)
《史上最速Vへ》大の里、来場所で“特例の大関獲り”の可能性 「三役で3場所33勝」は満たさずも、“3場所前は平幕”で昇進した照ノ富士の前例あり
週刊ポスト
家族で食事を楽しんだ石原良純
石原良純「超高級イタリアン」で華麗なる一族ディナー「叩いてもホコリが出ない」視聴率男が貫く家族愛
女性セブン
グラビア撮影に初挑戦の清本美波
新人美女プロゴルファー清本美波が初グラビアに挑戦! ふだんの「韓国風メイク」よりおとなしめのメイクに困惑
NEWSポストセブン
【あと1敗で八冠陥落】藤井聡太八冠、「不調の原因はチェス」説 息抜きのつもりが没頭しすぎ? 「歯列矯正が影響」説も浮上
【あと1敗で八冠陥落】藤井聡太八冠、「不調の原因はチェス」説 息抜きのつもりが没頭しすぎ? 「歯列矯正が影響」説も浮上
女性セブン
小学校の運動会に変化が
小学校の運動会で「紅組・白組を廃止」の動き “勝ち負けをつけない”方針で、徒競走も「去年の自分に勝つ」 応援は「フレー! フレー! 自分」に
NEWSポストセブン
歌手の一青窈を目撃
【圧巻の美脚】一青窈、路上で映える「ショーパン姿」歌手だけじゃない「演技力もすごい」なマルチスタイル
NEWSポストセブン
一時は食欲不振で食事もままならなかったという(4月、東京・清瀬市。時事通信フォト)
【紀子さまの義妹】下着ブランドオーナーが不妊治療について積極的に発信 センシティブな話題に宮内庁内では賛否も
女性セブン
死亡が確認されたシャニさん(SNSより)
《暴徒に唾を吐きかけられ…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の母親が“残虐動画の拡散”を意義深く感じた「悲しい理由」
NEWSポストセブン
9月の誕生日で成年を迎えられる(4月、東京・町田市。写真/JMPA)
【悠仁さまの大学進学】幼稚園と高校は“別枠”で合格、受験競争を勝ち抜いた経験はゼロ 紀子さまが切望する「東京大学」は推薦枠拡大を検討中
女性セブン
5月場所は客席も活況だという
大相撲5月場所 溜席の着物美人は「本場所のたびに着物を新調」と明かす 注目集めた「アラブの石油王」スタイルの観客との接点は?
NEWSポストセブン
杉咲花と若葉竜也に熱愛が発覚
【初ロマンススクープ】杉咲花が若葉竜也と交際!自宅でお泊り 『アンメット』での共演を機に距離縮まる
女性セブン
アメリカ・ロサンゼルスの裁判所前で、報道陣に囲まれる米大リーグ・大谷翔平選手の元通訳、水原一平被告(EPA=時事)
《愛犬家の間で命名問題がぼっ発》仲良くしてほしくて「翔平」「一平」とつけたが、飼い主から「一平の名前どうしよう…」「イッちゃんに改名」
NEWSポストセブン