思想史研究者で慶應大学教授の片山杜秀氏

片山:平成に入り、小泉純一郎と竹中平蔵が構造改革を行って、新自由主義を推し進めようとしましたが、中途半端に終わってしまった。確かに日本で新自由主義は完成していない。

 しかしその過程で、これまで社会の中心だった地域や組織などが崩壊し、その構成員だった一人一人の国民が個として独立するアトム的な社会が生まれてしまった。

佐藤:そこが現代社会を読み解く上で重要な点と思います。では、なぜ日本で徹底した競争が浸透しないのか。それは、アトム化した個々が中途半端に結びつこうとするからではないかと思うのです。

片山:なるほど。戦前は天皇のくびきで日本は束ね切れず、平成はそのくびきがアトム化した個々を結合させていると。

佐藤:そう感じます。学生を見ていてもアメリカや中国でグローバルスタンダードの切った、張ったの勝負に出ようとしないでしょう。留学する学生も減った。保守は保守でも、生活保守主義が蔓延している。

片山:生活保守主義とポスト平成という言葉で連想するのが、皇太子です。皇太子と言えば、多くの人が雅子妃に関する「人格否定発言」を思い出すのではないでしょうか。あの発言で家族を必死になって守るイメージが国民に定着した。

佐藤:おっしゃるように皇太子は、自分の家族だけを大切にする戦後の核家族のイメージに重なりますね。

片山:何よりも今上天皇は象徴として被災地や沖縄に足を運び続けたが、皇太子はどんな価値観や考えを持っているのか。それがまったく見えてこない。

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