ライフ

カリスマ書店員が選ぶ新井賞、回を重ねるごとに影響力増す

新井さん目当てで書店を訪れる人も

 1月16日の夜、今年の芥川賞・直木賞の受賞作が発表された。実はその同日、同時刻、ある女性が発信するツイッターを待ちわびて、多くの人が携帯電話の画面を真剣な眼差しでのぞきこんでいた。彼女が作品名をツイートすると、驚きと喜びに満ちた投稿がツイッターを埋め尽くす──本好きの一般読者や書店員、出版社が注目するもう1つの文学賞「新井賞」の発表だった。

「新井賞」とは、三省堂のカリスマ書店員・新井見枝香さんが立ち上げた賞だ。

「書店に飾られるPOP、宣伝文句など、新井さんが手がけると話題になります。一書店員さんですが、作家からの信頼も厚い。その新井さんが独自の企画として5年前から始めたのが『新井賞』です」(文芸関係者)

 これまでも本家の芥川賞・直木賞と同様に、半年に一度、一作品を選び発表してきた同賞。その選考基準は、「半年でいちばん面白かった本を独断と偏見で選んで、ひとりで勝手に表彰しています」と新井さんは言う。

 本の目利きが純粋に選び抜いた作品に読者の注目は高く、回を重ねるごとに影響力は大きくなっている。

「他の数ある文学賞よりも、書店での売り上げが大きいともいわれるほどです」(前出・文芸関係者)

 このたび、第9回の受賞作となったのは、コミックス『ダルちゃん』(はるな檸檬作、全2巻)だ。コミックが選出されるのは新井賞初のこと。発表直後からSNS上では「新井さんが薦める本ならジャンルなんて関係ない」と、文芸好きの読者にも広がりを見せている。

『ダルちゃん』の主人公は、24才の派遣OL・ダルちゃん。他人から嫌われたり、浮いたりしないように一生懸命に苦手なメイクを覚えたり、社会のルールを身につけ「フツウの女性」として“擬態”生活を送るものの、家に入るなり姿形をなくすダルダル状態に。

 嫌われたくないあまり、自分を見つめることから目をそらして周囲に合わせたり、世間から与えられた役割をこなさなければ、ともがく女性が生きていくしんどさが描かれている。

「これを作品として描ききったことに作者の覚悟を感じます。これを超えるものにはそうそう出合えないと思わせる、完璧な作品です」(新井さん)

 受賞発表以降、30代女性を中心に「ダルちゃん」ブームが始まっているという。妻、母親、娘など、女性が生きる上で付与される「役割」はさまざまで、その誰の中にもいるだろう「ダルちゃん」は多くの女性の共感を呼んでいるようだ。

 次の新井賞も楽しみ。

※女性セブン2019年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン