国内

セルフレジに戸惑う高齢者が発したひと言でふと我に返った話

セルフレジばかりになったら買い物難民が出現か

 人手不足を補い、効率化を目的として、様々な場所で自動化がすすんでいる。大手チェーンを中心にすすむ「自動会計レジ」(セルフレジ)に対しては、高齢者を中心とした使い方に馴染めない客をめぐって様々な角度からの苦情が絶えない。ライターの宮添優氏が「自動会計レジ」によって明るみに出た格差について、考えた。

 * * *
 東京下町のとあるスーパー。年末の買い出し客で大混雑のフロアを右往左往しながら、なんとか年越し用の食材をカゴにぶち込むと、そのままレジの長い行列に並んだ。会計までに何十分も並ぶのか…そんな筆者の不安は杞憂に終わった。なぜならそこは「自動会計レジ」だからである。

 会計は奥に設置された機械で行い「従来の三分の二ほどの時間で会計が済ませられる」(同スーパー店員)のだ。端の方に設置された二列のレジは、店員が商品一つ一つレジを打ち、会計まで済ませる従来通りのもので、長い行列のほとんどは高齢者だった。

「年寄りは二の次ってことかねぇ、もう20分は並んでるよ」

 従来型レジに並んでいた東京・葛飾区の女性(70代)はいう。一度知らずに自動会計レジを使ってみたものの、会計機の使い方がわからず、店員に教えてもらいながら操作したところ、後ろの客からは舌打ちされ、周囲の客からの視線に肩をすくめざるを得なかった。だから、何十分かかろうと従来型のレジ列に並ばないと、安心して買い物も出来ない。女性にとってこうした経験は、デジタル化社会、スマート化社会がいかに自分や年寄りから離れた世界の出来事かと思わせるには十分な「トラウマ」となった。

 こうした疎外感を感じる高齢者は少なくない。別のスーパーでも「自動会計レジ」をめぐる高齢者トラブルが後を絶たないと、同スーパーのマネージャーが解説する。

「やり方がわからない、こう(自動化を)して我々をいじめるのか、という高齢のお客様からのご意見は多いです。その都度、従業員がご説明に当たらせていただいており、お客様が“買えない”という事態は発生していないのですが、一方で別のお客様から“高齢のお客様を自動会計レジに並ばせるな”などといったご意見も頂戴しており、こちらとしてはその都度フレキシブルに対応するしかないのが現状です」(スーパーマネージャー)

 古くは「駅の自動改札化」がなされた時も、同じような高齢者からの反発、意見があったと聞く。つい先日、筆者も駅の自動券売機売り場や改札で、ICカードの使い方がわからないと、申し訳なさそうに駅員の世話になる高齢者を見た。もし、孫ほどの年齢の駅員に邪険に扱われれば、もう二度と電車など乗りたくない、そう思うのも仕方がないだろう。周囲にいた中年、若年の客たちも件の高齢者に冷たい視線を投げかけていた。お恥ずかしい話だが、筆者も彼らと同じで手間取る高齢者を苛つきながら見ていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン