自由貿易の名のもとに国内の産業を破壊しつくし、アベノミクスは脱デフレを標榜しながら国内の賃金低下をもたらし、あげくの果てに欧州ではすでに惨憺たる結果となった「移民」労働力の受け入れを急ごうとする。

 戦後レジームにおいて左右の政治勢力として対立してきた“利得者”たちは、イデオロギーの仮面を?いで、経済効率主義の名目のもとに、今この国の破壊にいそしんでいるのだ。江藤淳は『閉された言語空間』においてこう指摘した。

「(占領軍による徹底した検閲は)言葉のパラダイムの逆転であり、そのことをもってするアイデンティティの破壊である。以後四年間にわたるCCD(占領軍民間検閲支隊)の検閲が一貫して意図したのは、まさにこのことにほかならなかった。それは、換言すれば「邪悪」な日本と日本人の、思考と言語を通じての改造であり、さらにいえば日本を日本ではない国、ないしは一地域に変え、日本人を日本人以外の何者かにしようという企てであった」

「日本」は今やまさにグローバル企業に席巻される「一地域」に変貌しようとしている。それは日本人が「日本人以外」の「何者か」になりつつあるからだが、その淵源は戦後のわれわれが日本人の「歴史」と「文化」と「思想」に根ざした言語空間を喪失しつづけてきたからに他ならない。

 GHQによる占領下の検閲の延長に、自己検閲の罠から脱却することもせず、むしろそこに従属し安住することで、アメリカニズムを「自由」「平和」「民主主義」と言い換えてきたからである。

 江藤淳はCCDの言論検閲が戦後日本の言語空間を拘束しつづけ、そこから日本人の「歴史への信頼」の「内部崩壊」が地滑り的に起こり、深刻化していることを詳細に指摘したが、今日のニッポン語「コンプライアンス」「……ハラスメント」「LGBT」etc.を見るまでもなく、日本語は刻々と萎縮しつづけて止むことがないのである。対米従属は政治・外交上の問題、さらには国防の問題というよりは、その核心にあるのはむしろ言語・日本語という文化的根源の危機なのではないか。

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