ビジネス

スマホに焦点を当てて大ヒットしたラベルライターの開発秘話

『PT-P300BT』(左)と『PT-P710BT』(右)

 一度使い終わるとしまい込まれてしまい、収納の中でほこりをかぶりがちなラベルライターだが、スマホに焦点を当てることでヒットした商品がある。それが、ブラザー工業から発売中の『ピータッチ キューブ』シリーズだ。従来のイメージを覆すおしゃれなラベルライターの開発秘話をお送りする。

 2016年10月に発売されて以来、年間4万台を売り上げた実績をもつ、専用のスマホアプリからラベルを作成できる家庭用ラベルライターだ。

 従来のラベルライターは、モニターとキーボードが一体となっているものか、パソコンにつないで操作するものが一般的だった。ところが、ユーザーからは「使い慣れないキーボードなので打ちにくい」「子供の入園・入学の際の名前つけや家庭内でのモノの整理整頓が一旦終わってしまうと使わなくなる」という声があった。

 そこで、居住空間に置いておけるようなスマートなデザインを目指して開発がスタートした。スマホの専用アプリで操作することは決まっていたため、アプリのアイコンを意識した角の丸い正方形のデザインにした。

 ところが、この形状を保つことがなかなか難しかった。というのも、12mmのラベル幅に対応した『PT-P300BT』の場合、設計上はラベルを切るカッターレバーが鳥のくちばしのように飛び出たデザインになってしまうのだ。なんとかして正方形の中にカッターレバーを収めるため、何度も設計の検討を重ねた。

 また、24mmの幅広ラベルに対応した上位モデル『PT-P710BT』でも、本体設計で苦労することになる。使えるラベル幅を広くすると、本体サイズも大きくなりすぎてしまうのだ。そこで、『PT-P300BT』では直角になっている正方形の辺を斜めに削り取り、表面にツルッとした加工を施した。

 こうすることで、マットな質感を持った正面と材質とのコントラストが生まれ、小さく見え、高級感が生まれたのだ。数年の開発期間を経て発売されると、デザイン性と、スマホで気軽に操作できるという利便性で主婦層にヒットした。

 商品企画担当者の廣瀬さんは「クリスマスやバレンタインでは、親子で『こうしたらもっとおしゃれじゃない?』などと対話をしながらラベル作りができるので、コミュニケーションツールとしても役に立つんです」と語る。

 さらに、『PT-P710BT』は幅広ラベルに画像やお店のロゴを入れられるため、レストランやショップの経営者にも受け入れられた。専用アプリ「P-touch Design&Print」を使うだけで、デザイン性に富んだオリジナリティー溢れるラベルが簡単に作れるだけでなく、担当者が想定していなかったようなインスピレーションがユーザーから生まれ、新しい使い方がSNSで拡散されていったのだ。

「弊社が用意していたテンプレート以上におしゃれなもの、洗練されたものを作っていただいているので、私たちはいつもお客さまがお手本!という気持ちです(笑い)」と廣瀬さんは笑顔を見せた。

※女性セブン2019年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
来季米ツアー出場権を獲得した原英莉花(C)Yasuhiro JJ Tanabe
《未来の山下美夢有、竹田麗央を探せ》国内ツアーからQシリーズへの挑戦の動きも活発化、米ツアー本格参入で活躍が期待される「なでしこゴルファー」14人
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン