「第9回新井賞」を受賞したコミック作品『ダルちゃん』


「中でも私がおすすめしたいのは、『ちひろさん』『セッちゃん』『凪のお暇』『海街diary』シリーズです。これらの作品には、少女マンガの定番である“理想の王子様”は出てきません。つまり、恋愛や結婚で女の人生は救われない、ということをつきつけてくるんです」

 こういった作品は、2011年の東日本大震災以降増えたという。想定外の出来事が次々と起こり、普通や当たり前、常識と呼ばれるものが覆されたからだろう。

◆“自立女子”こそ幸せになれる?

「『ちひろさん』という作品は、自分の信念をしっかり持った女性が主人公。普通の側に生きる人から見たら、彼女は自由で破天荒。そのため、時に煙たがられます。でも、毎日を幸せに生きているのはどちらか、本心ではみんなわかっている。だからこそ、ちひろさんに引きつけられ、彼女と接することで、自分の人生を考え直すようになるんです。彼女からの叱咤激励は、みんなが言われたかったことばかり。だから読んでいてスカッとするんです」

 一方、『セッちゃん』の主人公も、変わった人と思われている。

「周りのみんながやっている学生運動には興味がなく、意識が低いと思われていますが、彼女には社会より、好きな人に会いに行くことが、すごいことだと気づくんです」

 多くの女性と同じヘアスタイル、同じ服を着て、空気を読んで生きてきた女性が主人公の『凪のお暇』もおもしろいとトミヤマさんは続ける。

 主人公の大島凪は、彼氏からのモラハラや女友達からのマウンティングをがまんしている自分に嫌気がさし、会社を辞めて、“お暇”をもらう。

「社会の中で浮かないように生きてきた彼女が、限界を感じ、人生のリセットボタンを押すわけです。今まで正しいと思っていた“普通の価値観”から脱却していく姿は痛快。そして、素の自分で生きる日常は、毎日が冒険。ご飯を作るのも、ご近所さんとのつきあいも新鮮で、自分らしく生きることは冒険なんだと気づかせてくれます」

 普通の人の日常を丁寧に描いた作品としては、『海街diary』も秀逸だという。

「この作品に登場する4姉妹は、言ってみれば、ごく普通の人たちです。でも、クローズアップすれば、普通から少しずれた部分があります。例えば、両親を亡くした主人公の少女は、自分の出生に負い目を感じていたり、正論ばかり言う長女は不倫をし、それを正当化していたり…。普通でまじめに見える人ほど闇を抱えているんです。それでも、毎日は続き、生きていればきっと希望が見えてくる。そんなエピソードに勇気がもらえます」

 長年“普通”と思いわれてきた女性像や人生設計は、通用しなくなりつつある。何者にも媚びず、自立して生きる。それがこれからの時代の“普通”になるなら、女性たちはどう生きるべきか──。マンガでも読んで、考えてみると、未知なる自分に気づくかもしれない。

※女性セブン2019年2月21日号

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