とはいえ、である。今や中高年でさえスマホを持つ時代、ネットでアダルトコンテンツを見るのは若者だけではないが、それでも中高年の一部の層からは成人向け雑誌の需要は根強い。
「コンビニではそもそも雑誌は売れていません。専門店や、郊外や地方のロードサイド型の弁当店や雑貨店では今もそれなりの需要があり売れています」
こう説明するのは、成人向け雑誌を書店などの販売店に卸す取次店業者の男性。筆者が実際に近所の大手コンビニを見て回ると、雑誌コーナーの横に申し訳なくあるか、すでに撤去されギャンブル誌などと一緒くたに販売されていた成人向け雑誌も、郊外の弁当店に行けば確かにズラリと並べてあった。というより、雑誌は成人向けのものしか置いていない。弁当店にいた女性従業員(60代)も「そこそこ売れる」と笑う。
「うちはトラックやタクシーの運転手が多いけど、弁当の待ち時間に雑誌が目に留まり、フラッと買ってく人も多いね。コンビニだと若い子がレジやってて買いにくいだろうけど、うちはオバちゃんばっかりだし買いやすいんじゃないの?」(弁当屋従業員)
雑誌棚には、専門店かと見紛うほどの品ぞろえ…。だが、よく見てみるとほぼすべての雑誌の表紙に「熟女」や「妻」などの見出しが「DVD付き」という文言と共に踊り、証言の通り、ターゲットが中高年であることがわかる。そのような趣向の雑誌がこれほど多種多彩に発売されていることに驚くレベルだが、やはり需要というのはいまだ存在するのだろう。
「成人向け雑誌の需要はない」と言われながらも、やはりまだ中高年層がメインのアナログ世代はれっきとして存在し、彼らのニーズにこたえるように、彼らが買いやすい環境で細々とではあるが販売が続けられている、というのが現状だ。しかしニーズがあるからと言って、かつてのような勢いが取り戻せるかというと、やはり現実は厳しい。
「ニーズというのは確かにある。ただし成人向け雑誌のほとんどが中高年向けに作られている事からもわかる通り、若い世代からのニーズは皆無に等しいのです。現在は映像業者との関係があるから、何とか紙で出せているだけ。電子書籍の利用者も増え、もはやアダルトコンテンツが紙である必要性がない。利益がこれ以上下がるなら、成年向け雑誌なんか誰も作りません。
表現の自由だ、女性への冒涜だと議論している人たちがいることは知っていますが、そういった話ではない。作っても食えなければ仕方ないから作らない、これが真実だと思います。まあ、コンビニで売れるかどうかなんて以前の話で、もう数年もすれば成人向け雑誌なんて消えますよ。雑誌を守ろうなんて熱い志を持った人は、業界にはもういません」(前出の雑誌編集者)
需要の低下、社会的価値観の変化…要因は様々であろうが、筆者世代からすれば、青年向け雑誌がいよいよ消えてなくなりそうだという光景は、やはりどこか寂しさを覚えずにはいられない。確かに何万部も売れて予算が潤沢にあり、人手もかけられた時代は帰ってこないだろう。だが、市場規模が小さくなったとはいえ、購入希望者は存在している。販売ルートも含め、急速に変化する社会に対応できる雑誌なら、きっとこれからも生き残るのだろう。