“NHK御用達”と言ったら言いすぎか。俳優の瀬戸康史が多くのNHK番組に出演している。その役どころにもある特徴があった。コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
* * *
今シーズン「一番たくさんNHKに出ている俳優」は瀬戸康史かもしれない。
朝ドラ『まんぷく』では、戦後、主人公の福子(安藤サクラ)、萬平(長谷川博己)夫婦の家に不法侵入(?)したのが縁で、仕事を手伝うことになり、のちに福子の姪と結婚した 神部茂役。また、土曜時代劇『ブシメシ2』では、高野藩主(草刈正雄)の衣服を整える衣紋方なのに、なぜか料理でさまざまな難題を解決することになる単身赴任中の若き藩士・酒田伴四郎。そして、Eテレ『グレーテルのかまど』では、姉のグレーテルのリクエストにより、自宅でさまざまなスイーツを手作りする15代目ヘンゼルである。2月25日には、『まんぷく』『ブシメシ2』『グレーテル』3本が放送され、「一日三回瀬戸康史の日」となった。
この3作に共通するのは、「常に瀬戸康史が年上の誰かに振り回されている」ということ。たとえば『まんぷく』では、萬平と炎天での過酷な塩づくりに参加したのをはじめ、新たに始めたインスタントラーメン作りにも興味津々。周囲も認める“萬平ファン”で、ラーメン作りにも「今すぐ仕事を辞めて手伝いたい」と言い出し、売り出しの際には袋詰めを担当して大喜び。振り回されたい若者である。
一方、『ブシメシ2』では、殿様の密命により、他藩に潜入。藩の運命を左右する密書を探して取ってこいと言われるが、密書なんてものがそう簡単に手に入るわけがない。困ったことにこの殿様は、時々、変装して伴四郎の前に現れて、あーだこーだと指図しにくるのである。草刈正雄の強引殿様は、『真田丸』以来の得意技。瀬戸康史は、毎週、困惑しつつ、振り回されている。
そして『グレーテルのかまど』では、なぜか「しゃべるかまど」に指導されつつ、世界のスイーツを作っているのである。「かまど」の声は、キムラ緑子。キムラは、朝ドラ『ごちそうさん』のいびり役でブレイクしたが、ここでは「しっかり混ぜるのがコツですよ」などと指導したかと思えば、ぐふふふと笑ったり、甲高い声で叫んだり。人間よりよっぽど自由。2011年の番組スタート以来、すっかりおなじみになっているかまどとヘンゼルのやりとりは、瀬戸の「振り回され芸」の修行の場と言っていい。