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深刻だが治療法も不明で死を選ぶことも… 「吃音」の実態

ノンフィクションライターの近藤雄生さん(撮影/杉原照夫)

【著者に訊け】
近藤雄生さん/『吃音 伝えられないもどかしさ』/新潮社/1620円

【本の内容】
〈出口も光も見えないし、助けを求める先もわからない。これから先の人生を生きていく意味があるとも思えなかった。そう感じる日々が続く中、高橋はいつしか毎日、考えるようになる。/死に、たい、と。〉──死を選ぶほどの深刻な問題でありながら、人からはわかりづらく、メカニズムも不明。著者は、吃音に、そして世間の偏見に苦しむ人たちや専門家などに取材、知られざる実態に迫る。

 吃音というテーマは、ライターとしての自分の原点だという。

「15年以上前に雑誌で吃音のルポを書いたときから、いつか本の形にできればと思っていました。思い入れもありますし、まだきちんと書かれてないという点でも、自分が書かなきゃ、とずっと思ってきました」

 どもる、口ごもる、といった吃音のある人が周りにまったくいないという人はまれだと思うが、この本に書かれる、吃音が理由で仕事を失い、自殺を図る人もいるという現実の重さを知る人はそれほど多くないだろう。

「ちょっと言葉がつまるぐらいのイメージですよね。ぼく自身、学生時代は吃音があって、就職をあきらめるぐらい悩んでいたんですが、周りでそのことに気づいた人はほとんどいませんでした。当事者と周囲のギャップがすごくて、このギャップを埋めなくてはという気持ちが強かったです」

「ぼぼぼぼく」とくりかえす「連発」、「ぼーく」と伸ばす「伸発」、「…(ぼ)くは」などと音が出ない「難発」と、吃音にもいくつか種類がある。

 子どものとき吃音があっても大半は自然に治る一方で、「連発」から「伸発」「難発」に移行する人も。言葉を言い換えたりそのまま沈黙したり、大人の吃音は子どもに比べて見えにくい。

「それぞれの物語が知りたくて、大勢の当事者に会って話をうかがいました。2013年に自死された看護師の飯山博己さんの名前を出す人は多かったですね。彼が与えた影響は大きくて、彼の死をきっかけに吃音の人の就労支援の仕組みをつくった人もいます。SNSの発達もあって、若い当事者どうしが互いにつながろうとする動きも出てきました」

 発達障害の一つとして、近年はメディアで取り上げられる機会も増えた。病院に吃音外来ができたのは最近のことで、古くから民間治療が行われているにもかかわらず、メカニズムも治療法もいまだ不明だという。

 一見、地味なテーマだが、雑誌連載中から反響は大きかった。医療的な視点や、当事者の人たちのその後も加筆されている。吃音を軸に、コミュニケーションの本質について深く考えさせる本だ。

■取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2019年3月21日号

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