これは特別な扱いではなく、戦後、日本が在日外国人に対して行なってきたことと同じである。
ただし、返還後の北方四島の統治に対するロシアの意向は“沖縄方式”だ。つまり、施政権(立法・司法・行政の三権を行使する権限)は日本に返すが、軍政はロシアが維持する、ということである。しかし、現状で四島に日本人は住んでいないのだから、日本側には施政権をもらって沖縄方式にする意味がない。
それならいっそ、平和条約締結と二島先行返還を交渉の入り口にしながら、最終的には四島をかつての北マリアナ諸島やパラオのような国連信託統治形式で日露共同の「非武装中立地帯」にするのがよいのではないか。それならアメリカも受け入れやすいだろうし、国後島の南に広がる豊穣の海での漁業も可能になる。四島とサハリン(樺太)、極東ロシアで日露がエネルギー分野を中心に経済協力を推進すれば、世界中から投資や産業を呼び込めるし、観光資源としても大きな可能性を秘めている。
安倍首相は、日本にとってあまり意味のない二島先行返還を選挙対策に利用するのではなく、どうすればそれが真の国益になるかということを考えて、平和条約を主眼としたロシアとの交渉を進めるべきである。
※週刊ポスト2019年3月15日号