「すでに有名予備校のカリスマ講師の授業が低価格で視聴できるようになっており、学力格差はテクノロジーで補完できるようになっている。そうなると、体験の差(体験格差)が能力の差として顕在化してきます。体験の効果は目に見えないので実感しにくいのですが、後になるほど差がついて人生の幸福度に影響するのです」(中村氏)

 だからと言って、特別な体験をさせる必要はない。都市部に住んでいるなら、夏休みなど家族で旅行に行くときに、たまには農家民宿に泊まるのも一つだ。見慣れない農村の風景を眺めて、伝統的な民家のつくりを観察したり、畑で収穫体験をしたりすれば、教科書に出てくる物語の情景描写の理解を深めたり、そこで暮らす生き物や植物、食への関心が強まるかもしれない。夕食時などに宿の主人から地域の伝統や風俗について語ってもらえば、その話しぶりや雰囲気が記憶となり、郷土史にふれる貴重な機会にもなるだろう。

 子どもの潜在能力を引き出すか、そのまま眠らせてしまうのかを分けるのは、親の認識の差だという。中村氏が続ける。

「体験を通して子どもは自分の興味のある分野、得意な方面にのめり込んでいきます。そのとき、最初は親が目的や目標を指し示す先導者となるべきですが、次第に横について走る伴走者になり、最後は沿道から声援を送る一ファンになるべきです。小学校の高学年にもなれば、親は伴走力を発揮していくといいでしょう」

 子どもの教育に熱心な親ほど子どもを手放すのが難しくなる。子育ての目的が経済的にも精神的にも子どもを自立させることだとすれば、何かと手や口を出すことだけが子育てではない。すべてわかって、何もせず、そっと見守るのも立派な子育てだ。

◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン