国内

バイトテロ 不適切動画投稿者たちが愚行を止められない理由

不適切動画問題を受け休業した大戸屋で、清掃する従業員(時事通信フォト)

不適切動画問題を受け休業した大戸屋で、清掃する従業員(時事通信フォト)

 大規模チェーン店での「不適切動画」騒動が相次いでいる。大手定食チェーン店「大戸屋」では、マスクをかぶった店員がズボンを脱いで露出した下半身をお盆で隠す動画が投稿されて流出。回転ずしチェーン「くら寿司」では、食材の魚の切り身をゴミ箱に捨てた後にまな板に戻して調理しようとする映像が流れ、大手コンビニの「ファミリーマート」では、商品のペットボトルを蓋ごと舐める店員の悪ふざけ動画がSNS上で公開された。

 そのほか、「すき家」「ビッグエコー」「バーミヤン」「セブン-イレブン」などの店舗でも、アルバイトなどによる不適切な動画投稿が続発。「バイトテロ」とも呼ばれ、社会問題となっている。

「これらの企業では、従業員研修を徹底したり再発防止のためのルールづくりに取り組んだりしていると報じられていますが、単にルールを学ばせる研修や社内教育だけでは、問題の完全な解決には至らないと思います。動画が流出するリスクをいっさい省みず、安易にこうした動画を投稿してしまうような人たちの考えを改めさせるのは、なかなか容易なことではないからです。

 むしろそれ以前に、彼らがなぜ不適切な動画を投稿してしまうのか、その心理的な背景を把握する必要があると思います」

 そう語るのは、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントとして100社を超える企業の相談に応じてきた舟木彩乃氏。ストレス・マネジメント研究者としても活躍する舟木氏によれば、こうした不適切動画を投稿する人たちは、単に「仲間うちで盛り上がりたい」といった悪ふざけのレベルを超えて、他人に認められたい、称賛を受けたいという「承認欲求」が歪んだ形で現われている可能性があるという。

「承認欲求は、誰もが持っている自然な欲求の一つですが、それが『自分は他人とは違う特別な存在だ』とか『他人が自分を称賛しないのはおかしい』という考えにつながると、『パーソナリティ障害』などの精神疾患が疑われるようになります。

 また、歪んだ承認欲求に固執して生きている人たちは、なかなかその価値観を変えることができません。行き過ぎた承認欲求には“中毒”のような作用があるためです。その背景には、承認欲求というものの複雑さがあります」(舟木氏、以下同)

◆他者の評価か、自身の評価か?

 歪んだ承認欲求の心理的背景を理解するヒントとして、舟木氏が近著『「首尾一貫感覚」で心を強くする』の中で挙げているのが、アメリカの心理学者アブラハム・H・マズロー(1908~1970)が提唱した「欲求の階層」説だ。

 マズローは、人間の持っている「欲求」は5つの階層構造からなっているという。第1段階は食事や睡眠など生きていくための欲求である「生理的欲求」、第2段階は安心・安全な暮らしや経済的安定性などの「安全の欲求」、第3段階は家族や会社などの集団に帰属したいといった「所属と愛の欲求」、そして、続く第4段階に挙げられているのが「承認の欲求」だ(※)。

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
「参政党パワー」の正体とは(神谷宗幣・代表)
叩かれるほどに支持が伸びる「参政党パワー」 スピリチュアリズム勃興の中で「自分たちは虐げられていると不安を感じる人たちの受け皿に」との指摘
週刊ポスト
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン