日本動脈硬化学会のガイドラインによると、性別や年齢にかかわらず「LDLコレステロールは140mg/dl以上、中性脂肪は150mg/dl以上」が高脂血症が疑われる基準値とされている。
だが実際は、欧米では悪玉コレステロールという概念すらなく、その基準値はLDLコレステロールが190未満となっている。
「大櫛基準」では、65歳男性ならLDLコレステロールは180まで、中性脂肪は161まで健康とされ、学会とはかけ離れているが、世界の基準には近い。
「コレステロールは細胞膜や神経細胞、ホルモン、骨を作るビタミンDなどの原料として身体に必須であり、そのコレステロールを各細胞に運ぶのがLDLコレステロールです。この値が減ると、これらの必須要素が身体に行き渡らなくなる」
そのため、学会などの基準値を超えていたからといって、むやみに低下薬を飲むと危険だという。
「欧米では、LDLコレステロール低下薬で糖尿病の発症率が1.7倍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症率が10倍になったという研究結果がある」
中性脂肪も、少ないより蓄えていたほうが長生きできるという結果が出ている。
「私たちの研究では『高脂血症の人のほうが脳卒中のリスクが減る』ことが明らかになっています。健康な人と高脂血症を治療中の人、高脂血症だが治療しない人の3グループを検証したところ、高脂血症とされた人では脳卒中の発症リスクが低く、治療するとそのリスクが高まるという結果が出ました。さらに、高脂血症を治療しなかった人は脳卒中になった割合が非常に低かった」
※週刊ポスト2019年3月29日号