ぼくの場合、月一回の医療保険の審査会がどうにも嫌だった。当時、院長をしていたぼくは、その審査会に出て、他の病院の診療レセプトを見て、不正や間違いがないかチェックする仕事をしていた。Gメンみたいで、ぼくには向いていないと思っていた。
その審査会のある日は、会場に向かうだけで嫌な予感がした。実際、頻脈発作が起き、冷や汗が出てきたこともある。予期不安や広場恐怖があったのだと思う。
◆隠さずに伝えれば大騒ぎにならない
パニック障害の治療は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などを中心とした薬物療法や、認知行動療法などが行なわれる。ストレスや過労などがきっかけになることが多いので、生活を見直すことも重要だ。
ぼくはまず、パニック障害であることを、病院の職員にも隠さずに伝えた。みんなに知っておいてもらえれば、仕事中に発作が起きても、大騒ぎにはならない。そして、抗不安薬の力も借りながら、生活を変えた。
当時、ぼくは朝4時半に起きて、医学や病院経営の勉強をする習慣があった。パニック障害になってからは、勉強を止めて、好きな音楽を聴いたり、詩や白土三平の『忍者武芸帳』を読んだりして過ごすことにした。
夜明けまで眠れず、いてもたってもいられなくなって、ベッドから這い出し、外で早歩きをしたり、ランニングをしたり。体を動かすと、少し楽になったような気がした。それを機に、日が昇ると外へ出て、ラジオ体操をしたり、スクワットやウォーキングをするようになった。身の置き所がないような不安感はいつの間にか消えていった。