ライフ

高齢者の歯茎に「がんの疑い」 かかりつけ歯科医の重要性

歯茎にがんができることが…(写真/アフロ)

 父の急死で認知症の母(84才)を支える立場となった、女性セブンのN記者(55才・女性)が、介護の日々を綴る。今回は、高齢者の「歯」の話題だ。

 * * *
 積極的な治療はせず、歯のクリーニングだけがルーティンになっていた母の歯科通院で「がんの疑い」を指摘された。認知症対策ばかり考えていた私はがく然。改めてかかりつけ歯科医のありがたさを実感した。

「あのね…この白いところ、がんかもしれない」。昨年夏のある日、母と歯科医院の待合室で束の間の読書を楽しんでいると、担当の女医さんが神妙な面持ちで私を手招きした。初めて入る診察室で、母の口腔内画像を見せられた。

 女医さんが慎重に言葉を選んでいるのがわかり、私の緊張はいっそう高まった。

「へー、歯茎にもがんが? 初めて知りました」などと、本題を避けるように平静を装った。少し離れたカーテンの向こうで歯のクリーニング中の母の気配を感じたからだ。でも内心は猛烈に動揺していた。何しろこの年齢まで、がんの心配なしできた母だ。

「がんになったら痛いのか。口の中だから食べられなくなるのか。治療はつらいのではないか。母もショックだろう。いや伝えない方がいい? だいたい私がこの不安に耐え、支え続けられるのか…」と、まだ検査もしていないのに、とめどもなく焦りが押し寄せた。

「いっそ、気づかずにいた方が幸せだったのでは…」と、投げやりにもなった。そんな私の心を見透かしたのか女医さんがきっぱりと「単なるただれかもしれない。ここで様子を見てもいいけれど、検査して状態を見極めてから、今後を考えた方がいいんじゃないかな。どうしますか?」。

 一瞬前まで大混乱していた私の頭の中が、女医さんの言葉に促され、さくさくと整理された。見事な洞察と采配だ。

「そうします。早い方がいいですよね」と、冷静さを取り戻して即答。歯科衛生士さんがクリーニングの手を止めて“がんばれ!”という強い目線を送ってくれ、受付の女性が手際よく大学病院の予約を取ってくれた。何もかもが心強かった。

◆いろいろ起こる高齢者。医師との信頼関係が大切

 結局、母には「がん」という言葉を伝えずに検査を受けさせた。歯茎の組織を採ったりしたので母も痛い思いをしたと思うが、医師や私には一切、質問をしなかった。何となく「ただごとではない」と、察していたのだろうか。このときばかりは「認知症で思考がボンヤリしていますように…」と、祈るような気持ちでいた。

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン